ヘンリー・ミンツバーグ先生と言えば経営学のビッグネーム。私の師匠に当たるスマントラ・ゴシャール先生のお友達なので、勝手ながら親近感を感じています。
ミンツバーグのマネジリアルロール
ミンツバーグ先生の出世作と言えば、マネージャーの役割を明らかにしたマネジリアルロール (Managerial Roles)でしょう。3カテゴリー、全10項目にわたってマネージャーが果たす役割を解説してくれています。
- 対人関係の役割
- フィギュアヘッド:組織やグループの代表者という地位や権限に付随する象徴的・儀礼的な役割。より具体的には、将来の目的や組織上の行動規範を言語化し、構成員に語りかける
- リーダー:部下に直接命令し、管理し、鼓舞する役割
- リエゾン:顧客や地域社会との交流など、地位や権限を活かして組織外部との関係づくりを行う役割
- 情報関係の役割
- モニター:財務分析・マーケティング分析・社内の口コミ情報など、定量・定性にかかわらず組織運営に必要な内外の情報を収集、分析する役割
- ディセミネーター:組織の内部(部下など)に情報やメッセージ・計画などを周知・伝達する役割
- スポークスパーソン:組織の外部に情報やメッセージを発信する役割。組織外というのは社外へのプロモーション活動だけでなく、社内の他部門への説明なども含まれる
- 意思決定の役割
- アントレプレナー:新製品を開発するための新規プロジェクトに組織の資源を投じる。新規顧客を獲得するために組織の世界的展開を決定する。
- ディスターバンス・ハンドラー:トラブル処理やトラブル防止策の策定など、予期していなかった困難な問題に対処する役割
- リソース・アロケーター:資金・人員・設備・時間などのリソースについて計画立案・承認・配分を行う役割
- ネゴシエーター:主要な交渉にあたって組織を代表する役割
- この理論を構築する手法としては、カナダ企業で実際に働くマネージャー400人ぐらいを聞き取り調査したような記憶があります。そこから帰納的に導き出されたので、まさにDown to earth (地に足がついている)なヘンリー・ミンツバーグ教授ならではでしょう。
一方で、ミンツバーグ先生は経営学会の論客という側面もあります。考えてみれば上記のマネジリアルロールも、既存の経営学のキレイにまとまった体系(ファヨール先生の理論とか?)に対するアンチテーゼで、「現場のマネージャーはそんなきれい事じゃねぇんだよ」みたいな問題意識に支えられていたはず。
そして、ご著書「MBAが会社を滅ぼす マネジャーの正しい育て方 」ではマネジメント教育業界に疑問を投げかけていました。私個人としては、全面的には賛成しないものの、「MBAは分析ばかりで使えない」という主張にはうなづけるところもあります。MBAホルダーの中にも頭でっかちの人はいますからね。
もしも、現場で使える理論を知りたいという方は、ヘンリー・ミンツバーグ先生の主張は要チェックです。
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この記事を書いた人
木田知廣
MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。
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