最近、よく聞く「スキルマップ」という言葉、アメリカではどうなっているかをレポートします。ズバリ日米の違いは「オープン化」です。
スキルマップで持っているスキルを明らかにする
スキルマップは単純にいうと、
従業員の持っている(持つべき)スキルを可視化して社内で共有する
取り組みです。
いまスキルマップが求められている理由は、ビジネスを取り巻く環境変化。DXや人工知能など普及するにつれて、
- 今のスキルだけでは変化に対応できない
- 将来必要なスキルを特定して人材育成につなげたい
- そのためにもまずは現状のスキルの棚卸が必要
と考える経営者が多くなっているのです。
ちなみに、厚生労働省はこの分野に大きく力を入れていますから、大きくは労働力の活用や成長分野への人の移動も視野に入れているのでしょう。
スキルマップよりもスキルベースの学習
アメリカにおいてもビジネス環境の変化に対応する必要性はまったく同じ。ただ、従来的にジョブ型の人事制度を採用していたため、「その人がどんなスキルを持っているのか」の可視化が進んでいました。結果として、「スキルマップ」という現状把握のアプローチは主流でなさそう。
むしろ、「スキルベースの学習 (skills based learning)」という、「新たにスキルを獲得すること」に、より多くの力が注がれている印象です。具体的には、
- 組織が必要なスキルを特定する
- 今従業員が持っているスキルとのギャップを明らかにする
- そのギャップを埋めるカリキュラムを提供する
となります。その際、「スキル」と言っても漠然としたものでなく、
理論的な知識に焦点を当てるのではなく、従業員が仕事にすぐに応用できる実践的なスキルに重点を置きます。これを「目的を持った学習」と考えてください。
というのが目新しいところでしょうか(Instructureグループのブリタニー・グッディング氏による)。
米国で進むスキルマップのオープン化
一方、スキルマップに関して日米で大きく異なる点は「オープンさ」です。米国企業では、たとえ社内研修であったとしても、その従業員がどのようなスキルを保有しているかを対外的にも示してあげようという動きがあります。具体的には、オープンバッヂで外部にも見える化することで、
資格認定がポータブルであることを確認して、従業員がキャリアを通じて持ち歩けるようにします。
と言うポリシーです(上述のグッディング氏)。
日本の場合、離職防止のために社内で人材を囲い込みたいというニーズが強くあります。結果としてスキルの見える化は外部には行わないでしょう。
しかし、長期的に人材競争力を高めるのであれば、むしろ逆です。
「外でも活躍できるスキル」を身につけられる企業の方が、結果的に優秀な人材を惹きつけ、育成し続けることができるのではないでしょうか。
スキルマップの導入を考える企業こそ、単なる「社内のスキル整理」ではなく、「従業員の市場価値を高める仕組み」を考えるべき時期に来ているのかもしれません。
この記事を書いた人

木田知廣
MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。
ブログには書けない「ぶっちゃけの話」はメールマガジンで配信中。
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