昨日、ATD2019報告会を開催いたしました。そこでご質問が出た、「戦略と整合したタレントマネジメント」について解説します。
パズルで考えるタレント・ディベロップメント
戦略とタレントマネジメントをすりあわせることの重要性はATDのICE2019でも指摘されていました(ATDとは何かはこちらから)。その本質と事例を語っていたのが、「Build a Talent Development Framework that Aligns with your Strategic Business Objectives、戦略的ビジネスゴールと整合したタレント・ディベロップメントのフレームワークを構築する」と題されていたセッション(セッションID: W201)。
そこで紹介されたのが、「タレントディベロップメント・パズル」というツールです。これは、ジグソーパズルをモチーフにしたもので、人事部門内で、あるいは人事部門と経営部門で戦略とタレントマネジメントの整合性を考えるためのものです。
パズルのピース一つ一つにはタレント・マネジメントに関するキーワードが書かれています。
- チェンジマネジメント (Change management)
- 学習効果の測定 (Evaluating Learning Impact)
- キャリアディベロップメント (Career Development)
などなど。これを、「このピースは重要だ」、「いや、こちらの方が重要では?」、「これは現状ではそれほど優先順位が高くない」と議論をしながら、重要なものほど内側に(図中の濃い赤のピースで表される)、重要でないのは外側に(オレンジ色のピース)並べていきます。
もちろん完成形自体が重要なのではなく、議論の過程で優先順位を決めることで戦略への理解が深まり、より整合性のあるタレントマネジメントができるのがポイントです。
なお、オンライン上では実際にクリック&ドラッグでパズルのピースを動かせるようになっているので、人事部門でそのまま使えそうです。
豪華な後援者が魅力のATDカンファレンス
ちなみに、このツールを紹介したセッションはスピーカー(講演者)も豪華でした。
- UC BerkeleyのChief Learning OfficerのAngela Stopper氏
- ATDのVP (Community & Branding)のJennifer Homer氏
- Penn State University教授 William Rothwell氏
とくに、Angela Stopper氏は現在の役職に就任直後に、スタッフの入れ替えも含めた大きなテコ入れを行い、自部門のミッションを明らかにしたとのこと。その事例も踏まえた講演には説得力があります。そもそもが、「Chief Learning Officer」と言う役職が大学にもあるのも印象的です。
気概が支える米国人材マネジメントの強さ
上記のセッションも含め、ATD2019のカンファレンスで印象的だったのは、人事部門の「攻め」の姿勢です。トップから言われたことを粛々と実行する、あるいは現場(ライン)からの要望に淡々と応えるのではなく、人事部門こそが会社の未来を担っているのだという自負の下、積極的に発言していこうという気概です。
正直なところ、カンファレンスの全行程を通して、フレームワークそのものやツールに関しては、日米で大きな違いは感じませんでした。上述の「パズル」もそれ自体がスペシャルなものではないでしょう。
むしろ、人事に携わる一人一人の気概が米国人材マネジメントの強さを支えているのかもしれません。
この記事を書いた人
木田知廣
MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。
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