「スキルマップ」が話題になっています。社内の人材が持っている、もしくは持つべきスキルを可視化しようという試みで、人材育成につながりそう。とはいえ、「どこから手をつければ良いものか…」と悩んでいる人事担当者の方も多いでしょう。そんな方へのノウハウです。

スキルマップとしての社会人基礎力

経済産業相が提唱する社会人基礎力、よくできていると個人的には感じています。12の力(スキル)を3つのカテゴリーにまとめたもので、ほどよい網羅感があってスキルマップ作成のスタートポイントとしてお勧め。

ちなみに、「基礎力」という名前はあまり正しくなくて、あらゆる階層のビジネスパーソンに必要なスキル体系であると言ってもいいでしょう。

  • 前に踏み出す力 (アクション)
    • 主体性(物事に進んで取り組む力)
    • 働きかけ力(他人に働きかけ巻き込む力)
    • 実行力(目的を設定し確実に行動する力)
  • 考え抜く力(シンキング)
    • 課題発見力(現状を分析し目的や課題を明らかにする力)
    • 計画力(課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力)
    • 創造力(新しい価値を生み出す力)
  • チームで働く力(チームワーク)
    • 発信力(自分の意見をわかりやすく伝える力)
    • 傾聴力(相手の意見を丁寧に聴く力)
    • 柔軟性(意見の違いや立場の違いを理解する力)
    • 情況把握力(自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力)
    • 規律性(社会のルールや人との約束を守る力)
    • ストレスコントロール力(ストレスの発生源に対応する力)

過去さまざまな取り組みがあったスキルマップ

もっとも、体系的なスキルマップを構築しようという試みは過去多くなされてきたようで、小林祐児さんによる労作、リスキリングは経営課題~日本企業の「学びとキャリア」考 (光文社新書 1245)
によると下記が紹介されています(一部筆者改訂)。

名称 提唱元

1999

エンプロイアビリティ

日経連
2003 OECD-DeSeCo OECD
2004 就職基礎能力 厚生労働省
2006 社会人基礎力 経済産業省
2008 学士力 文部科学省
2008 就業力 文部科学省
2009 21世紀型スキル ATC21s
2010-12 ジェネリック・スキル OECD
2018 新・社会人基礎力 経済産業省

スキルマップは必要か?

一方で、上記の小林さんも指摘されていましたが、スキルマップは本当に必要か?という疑問はあります。実際、さまざまな取り組みがなされてきたことは、スキルマップには絶対的な正解はないことを示唆しているでしょう。

加えて、陳腐化の問題。今や時代はAI <人工知能>ですから、「人工知能と協働する力」抜きにはスキルマップは考えられません。すなわち、スキルマップは作成することそのものが目的ではなく、改訂も含めて活用することに意義があります。

OECD発のスキルマップ、DeSeCo

OECDが提唱するDeSeCoも見てみましょう。これは、Definition and Selection of Competencies:コンピテンシーの定義と選択と言うプロジェクトから生み出されたもので、3領域、9つのコンピテンシー(行動特性)からなります。

  • 異質な集団で交流する
    • 他者とうまく関わる
    • 協働する
    • 紛争を処理し、解決する
  • 自律的に活動する
    • 大きな展望の中で活動する
    • 人生計画や個人的プロジェクトを設計し実行する
    • 自らの権利、利害、限界やニーズを表明する
  • 相互作用的に道具を用いる
    • 言語、シンボル、テクストを相互作用的に用いる
    • 知識や情報を相互作用的に用いる
    • 技術を相互作用的に用いる

やや子供向け教育に主眼が置かれているので、こちらよりは経済産業省の社会人基礎力の方がスキルマップのスタートポイントとしては適切であると考えます。

ATC21sによる21世紀型スキル

ちなみに、子供向け教育という観点では、ATC21s (Assessment and Teaching in 21st Century Skills)が提唱した21世紀型スキルというのもひと頃話題になったので、こちらも紹介しましょう。

  • 思考の方法 (Ways of Thinking)
    • 創造性とイノベーション
    • クリティカルシンキング (批判的思考)、問題解決、意思決定
    • 学び方の学習、メタ認知 (認知プロセスについての知識)
  • 仕事の方法 (Ways of Working)
    • コミュニケーション
    • 協働(チームワーク)
  • 仕事のツール (Tools for Working)
    • 情報リテラシー
    • ICTリテラシー
  • 世界で生きるスキル (Skills for Living in the World)
    • シチズンシップ (ローカルとグローバル)
    • 人生とキャリア設計
    • 個人と社会的責任(文化についての理解と適応)

なお、子供向け教育におけるスキルマップの変遷は、Takeshi Yoshiiさんのnoteが充実しています

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この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

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