「働き方改革」の先頭を走る企業、ユニリーバをご存じでしょうか?社名は知らなくても、ダブやラックス、そしてティモテなど、ヘアケア商品でお世話になっている人も多いでしょう。その働き方改革成功の秘訣を人事部長の人事総務本部長の島田由香さんに聞いてきました(肩書きを間違えました。失礼しました)。その成功の秘訣と、日本企業が学べる処方箋は。

働き方改革で生産性が上がる

ユニリーバで実践している働き方改革は、Work from Anytime & Anywhereの頭文字を取ってWAAと呼ばれているそうです。その名の通り、リモートワークの環境を整えて、いつでもどこからでも働けるというもの。

ちなみに読み方は「ダブリュー・エー・エー」ではなくて「ワア」。ワァワァ楽しく働こう、というニュアンスが込められているのでしょうか。というか、ダブリュー・エー・エーだとどっかのプロレス団体みたい。

ユニリーバでは、このWAAによってビジネス面でも好影響だそうで、生産性・創造性・社員の幸福度合いも上がったそうです。メモ取るのを失念しましたが、たしか生産性は30%ぐらい向上したとおっしゃっていたような気がします。

日本企業で「働き方改革」に携わっている方の悩みの1つが「生産性をどのように測定するか」だと思いますが、ここを島田さんは「感覚値」と割り切っておっしゃってました。

これはこれで正解でしょう。

「分子は成果で、分母は労働時間、かな?」など細かく数字をいじって「生産性が上がった!」と帳尻あわせをするよりは、「なんとなく」でいいから生産性が上がったという感覚の方がよっぽどしっくりきます。実際、「オレたち生産性上がったよな」と感じれば本当の生産性も上がりそうだし。

働き方改革性向の5箇条

そのユニリーバの働き方改革の成功要因を、島田さんは5つの要素でまとめてくれました。いわく、

  • ビジョンからのスタート
  • トップのコミットメントとBeing
  • Growth mindset and Risk Taking
  • テクノロジー
  • 仕事の明確化

その中でも一番大事なのが最初の「ビジョンからのスタート」。

実はここが多くの日本企業が苦労している原因かもしれません。

「働き方改革」は残業時間削減など「問題ありき」で始めるケースが多いとのことですが、これではいずれ頭打ち。むしろ、「そもそも何のために働き方を改革する必要があるんだ?」を突き詰めて考え、何を実現したいのか~たとえばそれは社員の心身共に健康な生活・労働だったりするわけですが~を定めることが重要とのことです。

日本企業にあるべき別の「処方箋」

とはいえ、このビジョンを定めるのが日本企業の場合難しいかもしれないですけれど。

そう考えると、ユニリーバの成功は成功として、実は日本企業にあった働き方改革の処方箋は、別にあるのかもしれません。

そんな目で改めて先ほどの五箇条を見てみると、「トップのコミットメント」、「リスクテイキング」、「仕事の明確化」と日本企業が苦手にしている要素が目白押しです。リスクテイキングなんて、日本人は遺伝子的に悲観的な人が多いという説があるぐらいですから、なかなかできるものではないでしょう。

考えてみれば、「社員を大事にする」というのは日本企業の伝統なはずです。仮に「社員に幸福になって欲しいですか?」と聞いたら、百人が百人とも「イエス」と答えるのが日本の社長でしょう。

だとしたら、日本企業にあった、「社員が幸せになり、会社の業績も上がる」という方法論があるはずです。

ただ…。

一方で日本企業、もしくは日本社会は変化する事への抵抗が強く、物事が大きく変わるのは外圧によるしかないことは過去400年間の歴史が示しています。

ユニリーバによるアングロサクソン的な先端事例や、アジア諸国との競争などを「外圧」として、日本企業が本当の「働き方改革」に目覚められるといいな、と思います。

work life balance photoPhoto by abhishekmaji

この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

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