先週の「MBAの心理学」シリーズも引きつづきパワハラですが、これに関連して示唆的な記事があったので紹介します。それが、小塩真司先生による『「ダークな性格」と多様性のある職場 “排除”ではなく“活用”のために必要なこと』です。この記事は素晴らしいので必読です。

パワハラをする人は共通の性格特性があった

まずはパワハラを起こす性格特性から。

これは多くの人が納得でしょう。「外向性が高い」というのは若干意外ですが、協調性が低くて謙虚じゃない人物は、いかにもパワハラをしそう。

そうすると、思うわけです。「こういう人を入社させないのが大事。採用試験で何らかの形でスクリーニングして、徹底的に排除しよう」、と。実際、津野香奈美先生のご著書「パワハラ上司を科学する」で提唱されたのはそんなニュアンスであったと記憶しています。

でもそうではないというのが、冒頭の小塩先生の提言なのです。

たとえパワハラする人でも排除しない

小塩先生は、パワハラを起こしかねないような性格特性を「ダークな性質」と呼んでいますが、そのような人がいる方が組織が健全であると提言されています。引用すると、

組織運営では、ダークな性質が求められる場面もあります。協調性に優れた人だけが集まると、相手のことを気にして意見が言えなくなってしまうことがあります。そんなとき、ダークな性質を持つ人が率直に発言することで、議論が活発になることが考えられます。また、プレッシャーがかかるけれど冷静に対応しなければならないような場面でも、ダークな性質を持つ人が活躍してくれるかもしれません。

これは、たしかにその通りでしょう。あるいは最近大企業で不正行為が続くことを考えると、ダークな人が混ざっている組織の方がグループシンク<集団浅慮>に陥りにくい可能性もあります。考えてみれば、これだけ多様性が叫ばれている世の中、たとえダークな性質の人であっても排除するのはおかしな話。

では、パワハラ防止はどうするか?ここでも小塩先生は示唆に富んだことをおっしゃられています。

ダークな性格の従業員がいたとしても、職場の中で問題が表出しないケースも多々あります。何か良くないことが起こったとき、「その人がどんな性格か」よりも重要なのが、「その人がどんな環境にいるか」です。ダークな性格の人が職場で問題を引き起こしてしまうのであれば、それはその個人よりも会社組織の問題が大きいと考えられます。

「罪を憎んで人を憎まず」とでも言うべきスタンスでしょう。これならば、「どのような環境を整備するのがよいか」と発想が広がりそう。

もちろん、それで全てが片付くほどパワハラは簡単な問題でないのは分かります。やや話が大きくなりますが、社会情勢が悪くなると、ダークな性質の人物がトップの座につく可能性もあるわけで。

いずれにしても、思考を刺激してくれる小塩先生のインタビュー記事、一読をお勧めします。harassment photo

この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

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