第一生命のリストラに刮目せよ!
2024年11月19日付の日経新聞で、「第一生命、中途採用3倍」という記事が掲載されました。これ、要注目です。
第一生命が1週間でなしとげた人材の新陳代謝
実は第一生命さん5日前の11月14日に、「第一生命HD、希望退職1000人募集 50歳以上が対象」という記事で日経に取り上げられています。つまり、1週間経たないうちに退職と採用の記事が掲載されたのです。
注目すべきはないよう。希望退職の方は
50歳以上で勤務期間が15年以上の社員などが対象
一方で、中途採用の方は
企業買収や資産運用など専門性の高い人材を社外に求める
とのことなので、健全な意味での新陳代謝<リストラクチャリング>が進んでいると見ました。
専門職ではジョブ型が定着するか
上述の第一生命に限らず資産運用の専門家は今引っ張りだこ。政府の掲げる「資産運用立国」の追い風を受けて、国内企業のみならず外資系企業でも採用が増えているそうです。
ただ、ここで問題になるのが、従来型の日本企業のジョブローテーション。数年単位で部署を変わるというアレですね。この対策として第一生命さんでは、
職務内容に応じて賃金を決める「ジョブ型」の導入を中期経営計画で掲げた
とのこと。
私は日本企業がジョブ型雇用にかかるのは相当に時間がかかるのではないかと見ているのですが、専門分野を持った職種では意外と早く切り替わるのかもしれません。その意味でも要注目です。
Photo by Deeped Strandh
第7回円城寺次郎記念賞にみる、日本の経済学の発展
2024年11月18日付の日経新聞で円城寺次郎記念賞特集が紹介されていました。受賞者の紹介があまりにも素晴らしかったので紹介します。
第7回円城寺次郎記念賞、東京大学の近藤絢子先生
今年の受賞は伊藤公一朗シカゴ大学教授と近藤絢子東京大学教授の2氏。近藤先生を紹介した文章を日経新聞から引用します。
近藤氏は地道なデータ構築と丁寧な分析の積み重ねに基づき、的確な情報発信を行うことを特徴とする労働経済学者であり、(中略) 若手研究者のロールモデルとしての地位を築きつつある
激賞、と言ってもいいでしょう。
研究分野も、主食氷河期世代の分析などされているとのことで、今まさに求められている内容だと思います。これ以上格差が広がらないためにも、その知見を知りたいですね。
円城寺次郎記念賞は日本の経済学の到達点を示す
一方で、そもそもの円城寺次郎記念賞とは何かというと、
日本経済新聞社の元社長で、日本経済研究センターの初代理事長を務めた円城寺次郎氏の名を冠したこの賞は、優れた業績をあげている気鋭の若手・中堅の経済学者・エコノミストの活動を顕彰することを目的にしています。
とのこと。過去の受賞者を見ると、カリフォルニア大学サンディエゴ校の星先生、東京大学の玄田先生など、そうそうたる顔ぶれが並んでいます。
ノーベル賞受賞者を見るに、日本の文系分野の研究って世界から遅れているんじゃないかと懸念していましたが、何だか心強くなりました。
円城寺次郎記念賞特集は対象が経済学の分野ですが、経営学でも同じような取り組みがあればチェックしてみたいと思います。
更新を続けているブログ、せっかくだからSNSで拡散したい
ブログを更新するたびにSNSに投稿する設定をしました。
エンジニア時代の「昔取った杵柄」
実は私は昔々エンジニアをやってたことがあったので、ITにはそれなりに強い方ではないかと思います。ふと思うときがありますよね。「あのままエンジニアを続けていたら、今どうなっていただろう?」って。
それはともかく、自分のブログも自社サイト内に設置したWordPressを使っていますし、いろんなプラグインを入れて機能強化を図っています。今回取り組んだのは、ブログが更新されるたびにSNSに自動投稿されるという機能。最近一念発起してブログを毎日更新しているので、その波及効果を狙うためですね。
WordPressとSNSの連携方法
まずはプラグインJetpackの機能を有効化して、facebook、tumblr、LinkedInに連携。Jetpackは定番のプラグインだと思いますが、ずっと昔にインストールしてからぜんぜん使っていなかったのを、ようやく本格稼働させました。
お次はX (旧twitter)。こちらはイーロンに買収されたからのゴタゴタでAPIに制限がかかっていたりして何だかややこしそう。プラグインAutopost for Xを有効化して、その後X側で開発者アカウントを有効にして…と何段階かにわたって作業があります。
最初にやったときはうまくX連携できなかったのですが、その理由はX側の開発者アカウントの設定にあったみたいです。昔つくったProjectをそのまま使い回そうとしたのですが、そのせいでうまく行きませんでした。なので、新たにゼロからProjectを作り直したら、今度はスムーズに連携することができました。
ビジネスパーソン必須のIT知識
この手の作業をするにつけ、今のビジネスパーソンにはITの知識は必須だな、と思います。もちろん、どこまで深掘りすればいいんだ、という議論はありますが、APIの概念とか簡単な実装方法ぐらいは知っておいた方がよいのではないかと思いました。
あと、最近で言えばアレですね。ChatGPT等の生成AI。こっちもGPTsとか自作してボチボチ使っていますが、どこかでガッツリ時間をとってしっかり勉強したいと常々思っています。
緊張をほぐす科学的な方法論~先週のMBAの心理学
緊張をほぐすための科学的アプローチ、いろいろありますね。
子供のころって、冬の掛け布団がやたら重く感じました。田舎育ちの人は分かってもらえると思うけど、綿のみっしりしたヤツです。「いやだな~」と思っていましたが、意外な効用があるとか。
【MBAの心理学】寝るときに重い掛け布団を使うと心身の健康度合いが上がる。発見したのは自閉症の動物学者テンプル・グラディン。触感覚の過敏さを改善するための「締めつけマシーン」がヒントになった。アメリカでは「チェーン・ブランケット」という名前で重い布団が流通している↓ pic.twitter.com/aG1higncHO
— 木田知廣 (マサチューセッツ大学MBA講師) (@kidatomohiro) November 12, 2024
このチェーン・ブランケット、日本では「加重ブランケット」と言うキーワードで売られていますが、Amazonでの評価が高いので、ちょっと買ってみたいかも。睡眠の質が上がりそう。
さて、緊張と言えばプレゼンテーションなど人前で話すとき。緊張のあまり声が震えることがあったりして。そんなときには「首回し」がいいですよ、と提唱しているのが鳥谷先生の「あがらずに自信をもって話せるようになる本」こちらは機材が必要なわけでもないので、試してみることをお勧めします。
あと、この「透明性錯覚」というキーワードは覚えておくと、気持ちが楽になりますね。
【MBAの心理学】「透明性錯覚」とは、自身の心の動きがそのまま相手に見えてしまっているという誤解。たとえ内心焦っていても、ポーカーフェースの訓練をすれば意外なほど相手には気づかれない。プレゼンでの緊張は「首回し」で防げる https://t.co/wXqJlAGqJa
— 木田知廣 (マサチューセッツ大学MBA講師) (@kidatomohiro) November 12, 2024
ハーバード・ビジネス・レビューも指摘する、現代の管理職のたいへんさ
先日のメルマガで「今の若手は管理職になりたがらない」という悩みの解決策を紹介しました。その背景にある、管理職のたいへんさを紹介します。
「管理職になりたくない」という若手の気持ちも分かって、その理由は今の管理職のたいへんさ。パワハラ厳罰化や若手の意識変化などで昔のやり方は通用しない中、今の管理職は悩みが多いものです。
このような状況はアメリカでも同じで、ハーバード・ビジネス・レビュー(HBR)の記事、「新任マネジャーはなぜつまずいてしまうのか」でもさまざまな課題が指摘されています。とくに、「新米マネジャーが抱いている幻想と真実」では、下記のような信認管理職が直面する課題を指摘しています(一部抜粋)。
幻想 | 真実 | |
基本特性 | 自分はもはや理不尽な要求に縛られたりしない | 自分の将来は部下たちの働働きいかんにかかっている |
権力 | ついに階段を上がりきった |
「職務職掌上の権威」以外のすべて みんな慎重で自らの胸襟を開き彼ら彼女らの信頼を得ることに努めなければならない |
逆に言うと、このような管理職の難しさを乗り越えるサポートをするのが、企業の役割なのでしょう。
アメリカ発 AIが人材育成にもたらすインパクト
アメリカ初の予測記事の紹介です。
アメリカ初 AIが人材育成に与える影響8つの予測
まずは元記事から。「時の試練に耐えた2024年のAI予測8つ(8 AI Predictions for 2024 That Stood the Test of Time)」と題された記事を紹介します。界最大の人材育成コミュニティ、ATDに投稿されたものなので、AI (人工知能)が人材育成に与えるインパクトを考察したものです。それが下記の8か条。
プロアクティブAI Proactive AI
洗練された AI と生の AI Refined vs. Raw AI
管理者向けリモートトレーニング Remote Training for Managers
労働力の多様性 Workforce Versatility
スキルアップとスキル再習得 Upskilling and Reskilling
日常生活の改善 Improving Daily Life
雇用市場の変化 Job Market Shifts
AIバイアスへの対処 Addressing AI Bias
いかにAIからよいアドバイスを引き出すか
この中から最初の「プロアクティブAI」を見てみましょう。元記事によると、
AI は、入力を待つのではなく、ユーザーのニーズを予測するようになりました。(中略) HR 分野では、従業員の役割やスキルのギャップに基づいてトレーニング コースを自動的に推奨する AI ツールが生まれ、L&D チームが従業員のニーズに先んじて対応し、よりカスタマイズされた学習体験を提供することが容易になりました。
とのこと。ちなみに文中のL&Dは”Learning & Development”を指し、人材育成と読み替えていただければと思います。
内容自体は極めて妥当で、このようなChatGPTの使い方は私も予想していました。原状では人間主導でウェブサイトにアクセスして質問(プロンプト)を投げかけて回答を引き出すという感じに。でも、将来的にはAIが人間の仕事ぶりを見ておいて、「もっとこうしたらいいですよ」とアドバイスをくれる世界になるでしょう。
と言うことは、逆に人間の役割、もしくは仕事のし方が変わってきて、「いかにAIから上手にアドバイスを引き出すか」が重要になってくると個人的には思っています。何だか本末転倒な気がしなくもないですけどね。
メルマガ MBAの三冠王 Vol.361 「今の若手は管理職になりたがらない…」の解決策
まずは業務連絡から。
イノベーションに関する勉強会を開催します。
https://corporate.ofsji.org/kouza/innovation/
テーマは、TPP.つまり
T 徹底
T 的に
P パクる
です。
だって、自社だけでイノベーションとか無理じゃないですか。
だとしたら、他業界のいい事例をパクってしまうのが近道です。
あ、ちなみに、ひと頃話題になってあっという間に死語になった「オープン・イノベーション」とは違います。
もうちょっと手軽なやり方なので、ご興味ある方はぜひお申し込み下さい。
では、本題。
ある人事部の方から悩みを聞きました。
最近の若手は管理職になりたがらないんですよねぇ…
それはそうだろうな、と思いつつ、実は面白いデータがあります。
それが、「管理職になりたくなかった人が、実際に管理職になったときのアンケート」です。
その意外な結果が…
ポピュリストがトップを務める国の末路は…
トランプ氏による政権の準備が着々と進んでいます。驚いたのは、国防長官にFOXニュース司会者のヘグセス氏を任命するとのニュース。ウクライナにイスラエルと世界情勢が混沌としている中、大丈夫なんでしょうか?
ポピュリストの定義にバッチリ当てはまるトランプ氏
私はトランプ氏はポピュリスト、つまり「耳障りのいいことを掲げるけれど、大事なことは取り組まない」政治家だと思っています。
ポピュリストは学問的には、下記のような定義になるとか。
- 国民を、善良で正しい「人民」と、エリートまたは不相応なマイノリティーに分断する政治戦略を中核に据えている
- 自分たちは「人民」の唯一あるいは最高の代表だと主張する
- 民主主義とは、政府が「人民」の意思に応えるために働くものであり、独立機関の制約や監視や固有の権利による制約を受けないと主張する
まさにトランプ氏が選挙活動の中で述べてきた主張に一致します。
ポピュリストが権力を握ると景気が低迷する
そして、トランプ氏がポピュリストである限り、アメリカの景気の先行きは暗いと想定されます。というのは、ケンブリッジ大学のロベルト・ステファン・フォア准教授と米カーネギー国際平和財団のレイチェル・クラインフェルド氏の研究によると、ポピュリストが権力を握ると景気は低迷するとのことだから。
冒頭に述べたヘグセス氏の国防長官任命のように、情実による、あるいは論功行賞による人事がまかり通ると正しい政策運営がされないからでしょう。
もっとも、前回のトランプ政権、2016年から2020年にかけては株価は大きく伸びたそうで、そう単純な話ではなさそうですけれど。でも今回はどうなるか、注意深く見守りたいと思います。
一杯5,000円のお茶が教えてくれる値上げできないメンタルセットの破り方
「中小企業は価格転嫁ができない」と言う思い込みがありますが、最大のボトルネックは自分のメンタルセットかもしれません。
値上げをできないメンタルセット
「年収103万円の壁」が話題になる昨今、こんなブログを読みました「パートさんと現場で働いたら「年収の壁」より厄介な「圧力」の存在に気づいた。」
確かにそういう側面はあるよなぁと思いつつ、気になったのは価格転嫁ができないと嘆く下記のパート。
製造原価(かけられる労務費)には限界がある。「商品価格に転嫁すればいい」という人は浅はかだ。いなり寿司を1つ500円で買う人はいない。商品にはその商品に求められる価格がある。いなり寿司を500円では売れないのだ。
これまた、「そうそう、中小企業はキツいよね」と同意しかけたときに頭をよぎったのが、先日テレビで見たこちら。タダ同然のお茶を「1杯5000円」で売り出し大逆転…佐賀・嬉野の茶農家が”薄利多売”をやめて起きたこと。」付加価値の付け方によっては、値上げも可能なのかもしれません。
ほぼ無料だったお茶を一杯5,000円で売る
まずは嬉野の茶農家の事例紹介です。お茶農家さんが茶室を用意してお茶を振る舞ってくれるというもので、「ティーツーリズム」と呼ばれているそうです。そのお値段何と15,000円。現地はお茶の産地なので、以前はお茶はただのようなものだったとのことですが、演出をすることでここまで値段を上げることができたという事例です。
正直を言えば、個人的には若干「引っかかる」ものはあります。いくらティーツーリズムとは言え、元がただに近いものに15,000円ですからね。お茶は3杯いただけるそうですから、1杯5,000円。自分で買おうとは思いません。
一方で、記事をよく読むと、以前はお茶農家だけで生計を立てるのは難しかったとのことで、これもやっぱりおかしい話に思えてしまいます。なので、その是非は置いておいて、元のテーマに戻りましょう。それが、値上げ。これまでなかったようなアイデアを広げれば値上げが可能であると嬉野の茶農家さんの事例は示しています。私もそうですが、中小企業の経営者は、自身の古い考え方をぶち破る必要があると感じました。
WBSトレンドたまごでマーケターのカンを研ぎ澄ます
私はテレビ東京のニュース番組WBSの大ファンです。中でも注目しているのが「トレンドたまご」(トレたま)のコーナー。さまざまな企業の開発努力に頭が下がります。
WBSトレンドたまごで紹介された「レンジで温めるインソール」
「トレンドたまご」、新規性のある商品を取り上げるコーナーですが、これを見ながら私は「この商品は売れるか、売れないか」を考えています。そのココロは、自分のマーケターとしての勘を研ぎ澄ますため。例え他社製品であっても、売れる売れないをあてることができれば、自社製品のよりよい開発に繋がると思うのです。
最近注目したのがこちらの「レンジで温めるインソール」。靴の中敷きですが、レンジで温めて成形することで、自分の足にフィットしたものが手軽に出来上がるとのこと。テクノロジーも新しいのでしょうが、なんと言っても発想が素晴らしいですね。開発元のGSIクレオスさんによると、
①「快足インソール」を、ご自身の足のサイズに合わせてカットします。
②付属のポリ袋に片足ずつ「快足インソール」を入れ、電子レンジで500W・50秒間温めます。
③使用するシューズの中に、温めた「快足インソール」を入れ、約3分間放置し、熱を冷まします。
④靴下を履いた後、インソールが入ったシューズを履き、そのままスクワット等で体重をかけることで自分の足型を作成します。
⑤シューズを脱ぎ、10分程度放置して足型が固まるのを待ちます。再度シューズを履き、歩きながら足になじませたら完成です。
という使い方だそうです。
WBSトレンドたまごを判断するフレームワーク
ただ、個人的にはこの商品がヒットの可能性は低いと感じています。なぜか。
インソール問題、あるいはそれに端を発した膝痛などの問題は顕在化されたニーズがあるところでしょう。実際私もここ10年ぐらい膝痛には悩まされていて、「何とかならないか」と思う日々。ただ、「レンジで温めるインソール」がそれの解決策にはならないと感じてしまいました。というのは、膝痛の原因が今の足の状態にあるとしたら、必要なのはそれを矯正するインソールだと思うのです。レンジで温めて現状の自分の足形をとってしまうと、逆に今の悪い状態がそのまま継続されてしまうのではないかと懸念します。
もちろん実際に試さないと効果のほどは分かりませんが、8,000円近くの金額は、ちょっとないかな、と感じてしまいました。まぁ、私の勘なんかは当にならないかもしれませんが。Uberイーツも、パジャマスーツも、「売れる」とは思っていなかったですからね。
ちなみに、私が「売れる、売れない」を判断するのは下記のフレームワークに則っています。
Pain:痛みはあるか?(明確なニーズはあるか)
Competitor:その痛みがこれまで解決されなかった理由は?
Now: 今回は痛みが解決できる根拠は?
Promotion: プロモーション上の工夫はあるか?
こういうので思考を繰り返すことにより、いつかは自分も売れる商品開発につなげたいと思っています。
人間の欲求を分類する~先週のMBAの心理学
人間の欲求はさまざまあって、それを分類した学説もさまざまあります。個人的にはEPPSが一番しっくりくるので、もっと多くの人に知っていただきたいですね
部下の動機づけには使えないマズローの欲求段階説
人間の欲求の分類で一番有名なものと言えばマズロー先生の欲求段階説でしょう。ただ、実際の職場で部下のモチベーションアップには使えないと私は思っています。そもそも段階の考え方は心理学的には否定されているわけだし。
では、それに代わる欲求の理論は何かと言うときにであったのが宗形先生の説。
【MBAの心理学】筑波大学名誉教授の宗形恒次博士は人間の欲求を「ソウルの欲求」として体系化。1.他者に受け入れられたい(慈愛願望欲求)、2. 自分に自信を持ちたい (自己信頼欲求)、3. 他者に貢献したい(慈愛欲求)。順序もこの順番で満たされる必要がある。 #心理学 #MBA pic.twitter.com/o1vaejqeVd
— 木田知廣 (マサチューセッツ大学MBA講師) (@kidatomohiro) November 6, 2024
これはこれでわかります。しかも、組織開発なんかのときには、けっこう重要だったりします。神田昌典先生が「成功者の告白」で述べていたことと同じですしね。
【MBAの心理学】宗形博士のソウルの欲求が正しいのであれば、父性的な他者貢献の前に母性的な受け入れが必要となる。神田昌典氏が「成功者の告白」で提唱したこととも平仄が合うか #心理学 #MBA pic.twitter.com/X6dEE0w7G6
— 木田知廣 (マサチューセッツ大学MBA講師) (@kidatomohiro) November 6, 2024
一方で、職場で部下の動機づけに関しては、もう少し軽いというか、実務的なレベルでの欲求分類が欲しいところです。
世の中にさまざまある欲求の分類
一方、カウンセリングの世界に目を移すと、ウィリアム・グラッサー博士の選択理論心理学 (choice theory、チョイスセオリー)を取り入れている人も多いと感じています。
- 生存 (安全・安定、健康)
- 愛・所属 (愛、所属)
- 力 (貢献、承認、達成、競争)
- 自由 (解放、変化、自分らしさ)
- 楽しみ (ユーモア、好奇心、学習・成長、独創性)
の5つに分類するものですね。ただ、これまた職場での部下の動機づけには難しさがあって、仮に部下が「自分らしさ」を求めているとしても、それを受け入れるのが難しいときがあります。
個人的には人間の欲求を15に分類したアレン・エドワーズさんのEPPSが一番しっくりくると感じているので、ご興味がある方はぜひチェック下さい。内罰欲求とかは、部下を理解するのに必須です。Photo by Luc Galoppin
「ジェームズ・レブロン効果」で燃え尽き症候群に?
ジェームズ・レブロンと言えば、NBAのスーパースター。八村塁選手の師匠筋に当たる方。そんなジェームズ・レブロンのセリフが、アメリカの人材育成業界でちょっと話題になっているようです。
ジェームズ・レブロンの「檄」
NBAにはあまり詳しくない私でも、レジェンド級の名選手であるジェームズ・レブロンさんのお名前は知っています。そんなジェームズ・レブロンさんの発言が注目を集めたのは、NBAの2023-24年のシーズン終盤。
ポストシーズン1回戦でナゲッツと対戦したジェームズ・レブロンさん所属するロサンゼルス・レイカーズは、3敗して後がなくなってしまいます。このままでは敗退か、と思われたとき、ジェームズ・レブロンさんはチームを鼓舞するために言うのです。
“As long as you still have life, then you obviously have belief. I just think you play ‘til the wheels fall off. That’s what it’s always about for me.”「生きている限り希望はある。『車輪が外れる』までプレーするだけだ。私にとってはそれが常に大切なことだ」
「車輪が外れる」というのは直訳ですが、ニュアンスとしては「身体がぶっ壊れるまで」という感じでしょうか。
このレブロン・ジェームズさんの檄もあって、ロサンゼルス・レイカーズは次の試合に勝利します。最終的には4勝1敗で敗退したとは言え、一矢報いたと言っていいでしょう。
誰もがレブロン・ジェームズになれるわけではない
上記のセリフを聞くにつけ、ジェームズ・レブロンさんのリーダーシップを感じます。そういえば、2023年夏のオフシーズンにはおなじくロサンゼルス・レイカーズに所属する八村塁選手と一緒にキャンプを張って、マンツーマンで教えたなんてエピソードもありますから、厳しいけれど面倒見がよい親分肌の人材像が浮かび上がります。
一方で、先ほどの発言、「身体がぶっ壊れるまで」というのは、アメリカの人税育成専門から見ると、「ちょっと言い過ぎ」だとか。ミリアム・メイマさんによると、
レブロン・ジェームズのメンタリティは、誰にでも当てはまるわけではありません。彼ほどの実力を持つアスリートには有効かもしれませんが、ビジネスではコート上のような最適な高パフォーマンス文化にはつながりません。
と、働き過ぎは燃え尽き症候群になってしまう懸念から警鐘を鳴らしています。
昨今のアメリカの人材育成業界を見ると、コロナに端を発した「大退職時代」、「静かなる退職」ときていかに従業員の心身の健康を守るかが重要になっているのでしょう。
米国発、建設的対立を育む組織とは
先日の研修で、「建設的対立」(constructive confrontation)という話をさせていただきました。これ、アメリカでも重要視されているようで…
米国でも重視される建設的対立
まずは研修の流れから。
ファシリテーターは中立の立場ではなく当事者型であるべき
と言う解説をしたところ、
そうすると、社内で当事者同士の意見がぶつかることがあるのでは?
と言うご質問をいただいて、
むしろ、意見がぶつかることが健全。それが建設的対立
と言う流れであったと記憶しています。
研修の際には、個人のスキルとしてのファシリテーション、もしくはファシリテーター型リーダーシップが主なテーマでしたが、組織の文化として取り組もうというのがこちらの米国発の記事です。「職場で建設的な意見の相違を許容する文化を築く (Building a Culture of Constructive Disagreement in the Workplace)」。
ちなみに、記事中で「TD」という用語が盛んに使われていますが、これはTalent Development (タレント育成)のことです。タレントはテレビに出てくる芸能人ではなく、「能力」のことですから、日本語の人材育成と同義であると考えてください。
職場で建設的な意見の相違を許容する文化を築く
では、記事の内容を見ていきましょう。まずは、建設的な意見の相違のメリットから。
- 問題解決とイノベーションの強化
- 意思決定の精度の向上
- 従業員のエンゲージメントとオーナーシップの向上
という点が挙げられています。
エンゲージメントの向上は、ちょっと微妙な気がしますけれどもね。記事中では、
意見の相違があったときに自分の意見が聞き入れられていると感じられる従業員は、エンゲージメントを維持
すると述べられていますが、じゃあ、自分の意見が通らなかった従業員はどう感じるんだろう?と疑問に思ってしまいました。逆にエンゲージメントが下がるのかな?
では、どうやって建設的な意見の相違を生み出すのかというのが、下記の諸点。
- オープンなコミュニケーション チャネル
- 積極的かつ共感的な傾聴を重視
- 人格ではなくアイデアに焦点を当てる
- 敬意を持って議論するための基本ルールを確立する
これは、納得。とくに、「基本ルールを確立する」のあたりは、グラウンドルールとも共通することで、ファシリテーター型リーダーの役割でしょう。
建設的な意見の相違のために人事部ができる、もしくはやるべき事
さらに同記事では、人事部の役割についても述べられています。というのは、この記事を掲載しているのはATD(Association for Talent Development)という世界最大の人材育成に関する業界団体なのです。メンバーの多くは人事部門の人なので、記事もこのような構成になっています。私も2019年にはワシントンで開かれたATDの年次総会に参加してきました。
では、建設的な意見の相違を許容する文化を生み足すために人事部ができることも見てみましょう。
- 解決策の議論を促進する
- 共感を表現する
- 効果的でオープンエンド型の質問をする
というものです。最後の「オープンエンド」を補足します。質問は大きくは「オープンエンド」と「クローズドエンド」に分かれて、後者はイエス・ノーで答えられる質問を指します。たとえば、「あなたは今日朝ご飯を食べましたか?」というものですね。
一方のオープンエンドはイエスノーでは答えられない質問を指し、たとえば「今日の朝食には何を食べましたか?」や「朝食を食べると仕事のパフォーマンスは上がりそうですか?」などの質問を指します。
記事中では、このオープンエンド型の質問により、対立している人々に考えを促すことで議論を解決に道部けることが示唆されています。
このように、人事部のサポートの下でファシリテーター型リーダーが生まれ、そのリーダーたちが現場での対立を恐れないというのが、アメリカ企業の強さを生み出す秘密の一つなのだと思いました。
MBAの三冠王 Vol.360 トランプは第二の「黒船」になれるか?
まずは業務連絡から。
オフィスの引っ越しに伴って、ホワイトボードとプロジェクタースクリーンがあまっています。
もし欲しい方がいらっしゃったら無償でお譲りします。
新橋まで取りにに来ていただく前提ですが、ご興味がある方はこのメルマガにご返信ください。
では、本題。
トランプ大統領が再登場することになりましたが、個人的にはノーサンキュー。
あんな風に平気でウソをつく人物を、国のトップに据える気分ってどうですかね?アメリカの皆さん。
一方で、良くも悪くも日本への影響がありそうです。
というのは、日本というのは「外」からの圧力がないと変わらないから。
古くはペリー提督の黒船から、最近ではジャニーズまで。
トランプ氏が、いい意味で第二の黒船になるといいのですが…
日経・経済図書文化賞を読みたい。中でも「マクロ経済動学」は面白そう
日経新聞より2024年度・第67回「日経・経済図書文化賞」が発表されました。私は一冊も読めてないので、忸怩たる想いがあります。
今年の日経・経済図書文化賞は
まずは受賞作から。
- マクロ経済動学: 景気循環の起源の解明
- 物価指数概論 指数・集計理論への招待
- 地域医療の経済学:医療の質・費用・ヘルスリテラシーの効果 (現代経済解説シリーズ)
- 教育投資の経済学 (日経文庫) 新書
- 投資のリスクからの解放: 純利益の特性を記述する概念の役割と限界
とくに、「マクロ経済動学」は特賞だそうで、これは読まねばと思いました。
昨、2023年の日経・経済図書文化賞は…
ちなみに、前回の受賞作も見てみましょう。2023年度・第66回「日経・経済図書文化賞」はこちらです。
- 『現代日本の消費分析』 宇南山 卓 著(慶應義塾大学出版会)
- 『行動経済学』 室岡健志 著 (日本評論社)
- 『民主主義を装う権威主義』 東島雅昌 著 (千倉書房)
- 『歴史学派とドイツ社会学の起原』 竹林史郎 著(ミネルヴァ書房)
- 『哲学と経済学から解く世代間問題』 廣光俊昭 著(日本評論社)
こちらも一冊も読めていないので、せめて今年のものは頑張って取り組みたいと思います。
開発援助は国益のためでなく…
2024年10月31日(木)付の日経新聞では、佐藤仁東京大学教授による論考が掲載されていました。その中で「へぇ~、ホント?」と感じたのが…
内閣府調査によると、開発援助は各国の助け合いのため
まずは佐藤教授の論考から。「開発援助の行方」と題された3回シリーズの最終回で、「課題解決より発生の予防を」との提唱です。
へぇ~と思ったのは、その中で示された「国民がODAを支持する理由」。
直近23年9月調査結果では、開発協力が必要である理由に「各国の助け合い」や「世界の平和と安定」を挙げる割合が、「日本の外交にとって重要」、「日本企業の海外展開」を上回った
とのこと。内閣府による「外交に関する世論調査」に基づいているそうですが、皆さんホントにそう思っているんですかね。
力による侵略にどう対抗するか?
調査時点が2023年9月と言うことで、ウクライナ戦争が始まってから1年半ほど経っています。力による世界情勢の変更を目の当たりにしても、「各国の助け合い」のようなお花畑的な発想になるのが不思議。私なんかから見ると、税金を使って行っている事業なわけで、国益の実現以外の選択肢はあり得ないと思っていたんですけどね。
ちなみに、日経新聞の記事の中の図表で見ると、私の考え方に近い「日本の戦略的な外交政策の重要な手段だから」は30%ほどの賛同しか得られていません。一方で、「災害や感染症など世界的な課題に対して、各国が協力して助ける必要があるから」は70%近い賛同。
世の中にはいろんな考えの人がいるなぁ、と言うのを痛感した出来事でした。
ジョブ型への道、はるかなり
2024年11月4日付の日経新聞、「ジョブ型『降格』悩む企業」と題された記事によると、パナソニック系の会社さんや富士通さんなどでジョブ型の人事制度導入に苦労されているそうです。常識一変ですから、そりゃたいへんですよね。
パナソニックコネクトさんの混合型ジョブ型人事
まずはパナソニックコネクトさんの事例から。同社の設立は2022年だそうですが、その当時からジョブ型人事制度を導入されていたそうです。ただ、厳密にはジョブ型ではなく「混合型」であるというのが日経新聞の分析。いわく、
メンバーシップ型を土台にジョブ型要素を部分的に導入する
とのこと(くわしくは元記事を)。
ジョブ型での給与の違いは日本になじまない?
特に悩ましいのが降格で、職種(厳密にっは職責か)が変われば給料が下がる可能性があるのが悩ましいとのこと。
というのも、同社では、
従業員の習熟やリスキリングを昇格に結びつけつつ、ポストと等級、各等級ごとに定められたレンジ賃金の3つを明確に関連付けるシステム
との運営をされているからとのことですが、この説明だけだとちょっと分かりにくいですね。前半の「習熟やリスキリングを昇格に結びつけ」って、まるで従来の職能資格制度に聞こえてしまって、ここら辺が「混合型」と定義したゆえんでしょうか。
いずれにしても、本来的なジョブ型の下での「職責が変わったから給料が変わる」というコンセプトが、従業員の受け止め方としては「単に給料を下げられた」となりかねず、そこには訴訟リスクまで含めた難しさがあるとのことです。
そうするとまずは、ジョブ型の前に「降給ありきの人事制度」の企業内での導入と社会的合意を形成するのが先かもしれませんね。
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山本五十六元帥の名言には続きがあった~先週のMBAの心理学
世の中には経営に関する「名言」がありますが、要注意だと個人的には思っています。
山本五十六元帥の「やってみせ…」
カッコいい「決め台詞」、言ってみたいですよね。中でも山本五十六元帥のこの言葉はあまりにも有名。
【MBAの心理学】「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」には続きがあった。「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず」。「やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」。ゴロがよいので人口に膾炙しているが検証されていない pic.twitter.com/e5JOjWKKhF
— 木田知廣 (マサチューセッツ大学MBA講師) (@kidatomohiro) October 29, 2024
ただ、この言葉ってエビデンスはないので、どこまで有効かは分かりませんけれど。イヤらしい言い方になると、「それはあなたの感想でしょ?」。山本五十六元帥にとっては真理かもしれませんが、置かれた状況が違う、取り巻く部下が異なると、そのまま当てはまるとは言えません。さらに言えば、山本五十六元帥が名将であったのかは疑問が残るところで。
名言は気軽に楽しむモノ
似たような話は他にもあって、これも有名。
【MBAの心理学】気づきがあれば考えが変わる、考えが変われば行動が変わる、行動が変われば習慣が変わる、習慣が変われば人格が変わる。by ジャン・J・ルソー エミール。ゴロがよいので人口に膾炙しているが検証はされていない #心理学 #MBA pic.twitter.com/fOS0OSZ0nf
— 木田知廣 (マサチューセッツ大学MBA講師) (@kidatomohiro) October 31, 2024
でも、こちらにもエビデンスはありません。
もっとも、こういうのはいちいち目くじら立ててもしょうがないんでしょうけど。なんとなく楽しむのが、この手の名言の本当の使い方かもしれません。
日経トレンディ、「2025年ヒット予測ベスト30」を読み解く
日経トレンディさんが「2025年ヒット予測ベスト30」を発表しました。正直、知らないモノばかりですが、考察してみたいと思います。
日経トレンディ、2025年ヒット予測ベスト30からトップ10をチェック
さっそく、2025年ヒット予測ベスト30のトップ10です。
- 肩がけプライベートAI
- サブスクスーパーバンドリング
- ライトアニメ
- おべんとPON
- ファスティングバー
- クレカでタッチ乗車
- ポーカー
- HD-2D版 ドラゴンクエストⅢ
- 電動モペッド&格安バイク
- Jiffcy(ジフシー)テキスト通話アプリ
中でも私の注目は…と思ったけれど、全部知らない(笑)。
もちろん7位のポーカーは知っていますが、IR (統合型リゾート)とのからみで密かなブームになっているとは知りませんでした。あぁ、あと、6位のクレカでタッチ乗車も知ってるな。スイカがあれば十分なのに、なぜ今さらと思いますが。
2024年版のヒット予測を見てみる
ヒット予測の背後を読み解くためには、時系列での観測です。日経トレンディさんによる2024年のヒット予測も見てみましょう。
- ドローンショー&空中QR
- 未来のレモンサワー
- 新Vポイント
- 「駅ナカ」コストコ
- ARグラスワーカー
- Privacy Talk
- 痛いコスメ
- パワードシニア
- 機能性ランドセル
- A2ミルク
全部知らない(笑)。
これ、きっと日経トレンディさんは意図的でしょう。「間違いなく流行る」という本命ねらいではなく、「ひょっとしたら大化けするかも」という穴ねらいのような気がします。もし当たったら、「ほ~ら、言ったでしょ」といえるようにするためにも。
と言うことは、逆にこの日経トレンディさんのヒット予測に取り上げられてしまうのは、「流行らない可能性大」という逆のお墨付きなのかもしれません。
AI<人工知能>面接官が採用を決める時代
昨日のメルマガで紹介したキリンホールディングスさんのAI面接官に反響をいただいたので、詳しく解説します。
キリンのAI面接官は満足度95%
キリンホールディングスさんでは、新卒採用でAI面接官が登場するそうです(まだ試験的)。エントリーシートの読み込みから第1次面接まで行うとのことで、合否判定まではしないものの、多面的に評価できるのがメリットとのこと。
審査のフレームワークには社会人基礎力をベースにした30項目です。おそらくはエントリーシートの文章やAI面接官との会話をデータとして取り込み、どのような強み(成果行動=コンピテンシー)を発揮しているかを探るというアプローチでしょう。
要するに、コンピテンシー・インタビューを人間に代わってAIが行ってくれると理解しました。確かに、30分ほどの面接では人間だと5-6項目しかコンピテンシーを発見できません。それがAI面接官は30項目チェックできるので、学生の強みを見つけやすくなりますね。
なお、そもそもですが、今どき面接はコンピテンシー・インタビューです。昔ながらの「志望動機は?」なんて効くだけ無駄。だって、いくらでも話を作れちゃうじゃないですか。しかも、どの学生も決まり切ったように、「社会的貢献をされている御社のビジネスモデルに感銘を受けました」みたいな答えをしてきて、採用者の選別にはなりません。
むしろ聞くべきは実績です。学生時代にどのような経験をしたかを深掘りして、そのエピソードから受験者の持つ行動特性(コンピテンシー)を探る方が、よっぽど精度高く選抜できます。もちろん、学生の場合は難しさがあって、「成果につながるエピソード」を語ってもらうのには工夫がいりますが、それでも新卒においても有効であると私は考えています。
Win-Winの人工知能面接官
で、キリンさんの人工知能面接官。既にテスト的に運用して、1,000人以上の面接のデータが蓄積されているとのことですので、それなりの精度は出るような気がします。しかも、面白いのは受験者(面接される側)の満足度が95%という点。今のような売り手市場においては、その後の合否にかかわらず面接において企業側も好印象を与える必要があります。昔は「圧迫面接」といって、わざと厳しい質問をして、プレッシャーかにおいて受験者がどのような反応するかを観察する手法がありました。でも、今どきそれはダメ。パワハラになっちゃいますからね。
ただ、好印象を与えようといっても、人間の面接官だと疲れてきたり、同じような回答を聞き飽きるとぶっきらぼうな受け答えになってしまいます。でもAIならばそこは無限に対応可能。面接官の負担軽減につながって、企業にも受験者にも面接官にもハッピーだと感じます。
AI面接官は長期でデータ蓄積がポイント
一方で気になったのが、面接の精度。合否は出さないとのことですが、そうは言っても二次試験に進むかどうかの目安にはなるはず。ちゃんと企業の成果につなげる強みを持った人材を選別できるか気になるところです。
特にキリンさんのように、本業のビール・アルコールが国内市場は頭打ちを迎えている業界では、これから新しいことへの取り組みが企業業績を大きく左右すると考えます。つまりは、既存社員が持っていないコンピテンシーを持つ学生を発掘する必要があるわけで、その評価が本当にうまくいくか興味津々です。
あるいは、もう少し長期的な視点かもしれませんけれど。2025年度の採用がどうこうではなく、AI面接で採用した人材が入社後5年、10年経ったとき、どのようなパフォーマンスをあげているのかをしっかりと検証するとのもくろみなのかもしれません。であれば、始めるのは早いに越したことはありません。それだけデータの蓄積が進むわけですからね。この観点で、キリンさんの取り組みは素晴らしいと感じました。
メルマガ MBAの三冠王 Vol.359 キリンで始まったAI<人工知能>面接官による新卒採用
面接って緊張しますよね?
私は新卒のときは学校の推薦で入社しちゃったので、厳しい面接ではなかったですが、それでも緊張感はありました。
転職の時だって、(コイツ、使えるかな?)と値踏みされているようで居心地の悪さを感じます。
でも、もし面接官がAI<人口知能>だったら?
機械が人間を選ぶようで、気味悪さを感じますか?
私だったら、人間の時よりもリラックスして話せそうな気がしてうれしいかな。
実際のところはどうか、要注目がビールのキリンホールディングスさんです。
その面白い取り組みが…
セルフリーダーシップのチェックリスト
「セルフリーダーシップ」という言葉、ご存じでしょうか?今風の言葉で言えば、「自走式」とも近しい概念です。そのチェックリストというのが…
再び脚光を浴びるセルフリーダーシップ
今の時代、指示待ちではなく自分で考えて動く「自走式」の部下が求められています。その背後にあるのは上司の忙しさ。プレイングマネージャー化している管理職は、部下にそれほど目を配れないので、支持を最低にしたいというニーズが顕在化しています。
これにあわせて再注目されているのが「セルフリーダーシップ」。もともとはアメリカの経営学者チャールズ・マンツ (Charles C. Manz)先生が提唱されたもの。ちなみに、マンツ先生はマサチューセッツ大学でも教鞭を執られていたらしいですから、私の同僚、いや大先輩ではないですか。親近感が湧きます。
マンツ先生の定義によると、セルフリーダーシップは
自分自身を導くため、自らに影響を与える総合的な視点
とのことで、若干難しく聞こえますが、自走式と考えても大きな間違いではないと思います。英語で言うと、order-taker (指示待ち)ではなく、self-starterといったおもむきでしょう。ちなみに、もともと提唱されたのは1980年代前半です。それが今、時代の変化とともに再度脚光を浴びています。
セルフリーダーシップをセルフチェックする
このセルフリーダーシップのセルフチェックリストも提唱されていて、たとえば”Revised Self-Leadership Questionnaire:RSLQ”なんてのも提唱されているそうです。たとえば、
- I establish specific goals for my own performance. 私は自分のパフォーマンスに対して具体的な目標を設定する。
- I find ways to make my work tasks more enjoyable. 私は仕事をより楽しめる方法を自分で見つける。
のように、自分で目標を設定して、そこに向かって自分の行動をコントロールしていく姿が想定されています。
ただ、日本においては企業文化の影響もあって、なかなか難しそうと個人的には思っています。一方で「自走式」の部下を求めつつ、一方では「余計なことをするな」という雰囲気の組織もありますからね。なので、日本式のセルフリーダーシップ理論が生まれてくるといいな、と思います。
ミンツバーグ教授が語る「マネージャーの役割」(マネジリアルロール:Managerial Roles)とは
ヘンリー・ミンツバーグ先生と言えば経営学のビッグネーム。私の師匠に当たるスマントラ・ゴシャール先生のお友達なので、勝手ながら親近感を感じています。
ミンツバーグのマネジリアルロール
ミンツバーグ先生の出世作と言えば、マネージャーの役割を明らかにしたマネジリアルロール (Managerial Roles)でしょう。3カテゴリー、全10項目にわたってマネージャーが果たす役割を解説してくれています。
- 対人関係の役割
- フィギュアヘッド:組織やグループの代表者という地位や権限に付随する象徴的・儀礼的な役割。より具体的には、将来の目的や組織上の行動規範を言語化し、構成員に語りかける
- リーダー:部下に直接命令し、管理し、鼓舞する役割
- リエゾン:顧客や地域社会との交流など、地位や権限を活かして組織外部との関係づくりを行う役割
- 情報関係の役割
- モニター:財務分析・マーケティング分析・社内の口コミ情報など、定量・定性にかかわらず組織運営に必要な内外の情報を収集、分析する役割
- ディセミネーター:組織の内部(部下など)に情報やメッセージ・計画などを周知・伝達する役割
- スポークスパーソン:組織の外部に情報やメッセージを発信する役割。組織外というのは社外へのプロモーション活動だけでなく、社内の他部門への説明なども含まれる
- 意思決定の役割
- アントレプレナー:新製品を開発するための新規プロジェクトに組織の資源を投じる。新規顧客を獲得するために組織の世界的展開を決定する。
- ディスターバンス・ハンドラー:トラブル処理やトラブル防止策の策定など、予期していなかった困難な問題に対処する役割
- リソース・アロケーター:資金・人員・設備・時間などのリソースについて計画立案・承認・配分を行う役割
- ネゴシエーター:主要な交渉にあたって組織を代表する役割
- この理論を構築する手法としては、カナダ企業で実際に働くマネージャー400人ぐらいを聞き取り調査したような記憶があります。そこから帰納的に導き出されたので、まさにDown to earth (地に足がついている)なヘンリー・ミンツバーグ教授ならではでしょう。
一方で、ミンツバーグ先生は経営学会の論客という側面もあります。考えてみれば上記のマネジリアルロールも、既存の経営学のキレイにまとまった体系(ファヨール先生の理論とか?)に対するアンチテーゼで、「現場のマネージャーはそんなきれい事じゃねぇんだよ」みたいな問題意識に支えられていたはず。
そして、ご著書「MBAが会社を滅ぼす マネジャーの正しい育て方 」ではマネジメント教育業界に疑問を投げかけていました。私個人としては、全面的には賛成しないものの、「MBAは分析ばかりで使えない」という主張にはうなづけるところもあります。MBAホルダーの中にも頭でっかちの人はいますからね。
もしも、現場で使える理論を知りたいという方は、ヘンリー・ミンツバーグ先生の主張は要チェックです。
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心理的安全性を測定する7つの質問
「心理的安全性」はご存じでしょう。これを知るにつけ、「ウチの会社はどうなんだろう?」と思う方も多いはず。そんなときに使えるのが提唱者(の一人)エドモンドソン教授謹製の7つの質問です。
心理的安全性を測定する7つの質問
さっそく、心理的安全性を測定する質問から。
- If you make a mistake on this team, it is often held against you. (このチームでは、ミスをしたら批難されることが多い)
- Members of this team are able to bring up problems and tough issues. (このチームのメンバーは、課題や困難なイシューでも提起することができる)
- People on this team sometimes reject others for being different. (このチームの人たちは、異質なものを排除する時がある)
- It is safe to take a risk on this team. (このチームなら、安心してリスクを取ることができる)
- It is difficult to ask other members of this team for help. (このチームでは、他のメンバーに助けを求めにくい)
- No one on this team would deliberately act in a way that undermines my efforts. (このチームには私の努力をわざと矮小化するような人はいない)
- Working with members of this team, my unique skills and talents are valued and utilized. (このチームのメンバーと仕事をする中で、私のスキルと才能は尊重され役に立っている)
元ネタは、Administrative Science Quarterly掲載のエイミー・エドモンドソン先生の論文です。ちなみに翻訳は私。
心理的安全性を測定する7つの質問の使い方
上記の質問、ちょっと気をつけることがあって、プラスマイナスが逆転するものもあります。たとえば1番目の質問は、スコアが低いほど(同意できないほど)心理的安全性は高くなります。逆に、2番目の質問はスコアが高いほど(同意できるほど)心理的安全性は高くなります。
おそらくは、ランダムにすることで被験者にちゃんと考えて欲しいという設計でしょう。
ただ、そのような工夫は認めつつも、たとえば7番目、「このチームのメンバーと仕事をする中で、私のスキルと才能は尊重され役に立っている」と言う質問に対して、どう答えるかは難しいでしょう。「う~ん、そういう側面もなくはないが…どうなんだろ?」みたいに。
私個人としては、エドモンドソン先生のご著書「チームが機能するとはどういうことか――「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ」を読んでも、「何を言ってるかちーとも分からん」という感想だったので、何か重要なモノを見過ごしているのかもしれません。
ACT (アクセプタンス&コミットメント・セラピー)を学びたい~先週のMBAの心理学
ACTはものすごく興味あります。時間ができたら、ちゃんと勉強してみたい
コミュニケーション齟齬の背景をACTで考察
今気づいたんだけど、X (旧ツイッター)の投稿、一つ抜けてた。
【MBAの心理学】ACT (アクセプタンス&コミットメント・セラピー)は行動分析学にもとづいた行動変容の方法論。カウンセリングや自閉症児の教育で使われることが多いが、実は大きな可能性を秘めている気がする
これ、メチャクチャ興味あります。
【MBAの心理学】RFTによる分類。「この部屋暑いですね」というセリフ、聞いた人の反応によって意味合いが異なる。聞き手が「そうですね」と返答するならタクトだし、エアコンをつける行動を取ったらマンドになる #心理学 #MBA pic.twitter.com/rFnbFAIe9o
— 木田知廣 (マサチューセッツ大学MBA講師) (@kidatomohiro) October 23, 2024
なんて言われると、「たしかになぁ」と思います。
日常のコミュニケーション齟齬が生じる背景には、この受け取り方の違いが大きな役割を果たしてそう。
ACTによる分析フレームワーク
ちなみに、上述の「RFT」を説明したのが下記のツイート。
【MBAの心理学】ACTのベースになっているのが関係フレーム理論(RFT: Relational Frame Theory)。言語行動を7つに定義している。マンド、タクト、エコーイック、イントラバーバル、ディクテーション、トランスクリプション、テクスチュアル pic.twitter.com/vglDwuTnwo
— 木田知廣 (マサチューセッツ大学MBA講師) (@kidatomohiro) October 22, 2024
「ははぁ」と思いました。こういう風に分析する手法もあるんだな、と。
谷先生の「言語と行動の心理学―行動分析学をまなぶ」は読んだけど、さらに学びを深めるにはどういうルートがあるんでしょうね。大学に行ってみるのも手なのかなぁ…
「トロッコ問題」への違和感
ひと頃話題になった「トロッコ問題」というのがありました。これ、学校教育でも取り入れられているみたいですが、経営者教育に携わる私から見ると、違和感を覚えてなりません。というのは…
考える価値がないトロッコ問題
トロッコ問題は、線路の切り替えポイントに立っていると仮定して、「このままでは5人の作業員が犠牲になる、でもポイントを切り替えれば方向が変わって、別の一人の作業員が犠牲になる。さあ、あなたならどうします?」というものです。
私は、初めてこれを聞いたとき思いました。
現実ではそんな問題は起こらないだろ
と。
だって考えてみてください。実際にこんな状況になったら、「逃げて~」と5人の作業員に声をかけるのが当たり前。小難しい条件を持ち出して思考をひねくり回しているのは意味がないと感じてしまいます。
さらに続きがあったトロッコ問題
しかも、トロッコ問題には続きがあります。「目の前に太った人がいる。その人を線路に突き落とせば作業員は全員助かる」というもの。
は?
としか思えないですよね。そんな都合がいい状況あるわけないので。そんな質問をしてくる人がいたら、私はこう答えます。
目の前で偉そうに出題しているお前を線路に突き落とす
と。いずれにしてもくだらない結論です。
経営人材には害悪のトロッコ問題
加えて、経営人材の育成という観点からは、少なくとも3つの観点でトロッコ問題は害悪です。
トロッコ問題の害悪性1:万全な情報で意志決定する
改めて、トロッコ問題を確認しましょう。こっちのレールでは作業員5人が亡くなる、こっちでは作業員一人が亡くなるという意志決定に関する条件は全てそろっている中で、「さあ、どうしますか?」と問うています。このような課題設定に慣れすぎると、「情報が不確定だから決められません」という人が増えてしまうと懸念します。
実際の経営上の判断ではそれは許されず、情報が不確定な中でも最善と思えるものを選ぶしかないのが現実です。トロッコ問題は経営に相応しくない人材を生み出しかねません。
トロッコ問題の害悪性2:一度きりの決定にとどめる
上述の通り経営においては不確実の中で意志決定するわけですが、それが一度きりではなく、何度も何度も繰り返されます。ということは、経営者は意志決定を振り返り、よかったところ、不十分だったところを明らかにして、より精度高い意志決定力を積み上げていくことが求められます。
若干余談になりますが、ハーバード・ビジネススクールから優秀な経営者が継続的に輩出されているのはこれが理由ですね。ケースメソッドで、企業の成功事例、失敗事例を数多く精査することにより、精度高い意志決定のスキーマが構築できるというのは、経営人材育成の「王道」とも言えるものでしょう。
一方、トロッコ問題は一度きりの状況設定になっており、この観点からも経営とはほど遠い思考の訓練です。
トロッコ問題の害悪性3:事後対応で事前対応が検討されない
さらに、トロッコ問題の本質的にマズいところは、事後対応に終始していること。
経営上は、トロッコの暴走が発生しないように仕組みで防止すべきですし、よしんば発生したとしてもその時の対応をマニュアル化して、誰もが対処できるように事前に想定しておくべきです。
実際の職場においても、これは当てはまります。トラブルが起こったときに緊急対応したスタッフはしばしば英雄視されます。英語では”Fire Fighting”と呼ばれますが、火の粉を振り払う姿は目につきやすいモノです。
しかし、経営における本当の英雄は、トラブルを起こさないように事前の仕組みを作った人です。そして、その仕組みを確実に運用するスタッフです。
トロッコ問題は、このような経営上重要な視座からかえって遠ざけてしまうでしょう。もし学校教育において使われるとするならば、このような害悪性も加味した運用をしていただきたいものです。
コロナ禍後はじめてのマスクを「しない」研修
木曜日、金曜日と2日間にわたる研修で愛知県にお邪魔してきました。その際、コロナ禍後初めてマスクを付けない研修をしてきました。やっぱり自然な感じでいいですね。
コロナ禍になって、体面での研修ではマスクをして講義するようになりましたが、最初はものすごく違和感がありました。呼吸が苦しいというか。でも、1年、2年と立つうちにだんだん慣れて、今ではそれほど違和感なくマスク越しでも講義ができる…と思っていたのですが、ぜんぜん違いました。マスクなしだと。
今後はそういう機会が増えそうで、「コロナは遠くなりにけり」という日も来るのでしょう。
メルマガ MBAの三冠王 Vol.358 今更ながら充実させたいブログ
まずは業務連絡から。
法人のお客様向けに、会計動画セミナのクーポンを発行しました。
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こちら↑から申し込めば、通常4,800円のところを1,300円でご受講いただけます。
ご興味がある方は使ってください。
では、本題。
最近ブログを充実させています。
10月はほぼ毎日更新していますので、ぜひご覧ください。
もちろん、単なる趣味の話ではなく、ビジネス、もしくは商売の話です。
どういうことかというと… (さらに…)
スキルマップ作成・活用のキモ
「スキルマップ」が話題になっています。社内の人材が持っている、もしくは持つべきスキルを可視化しようという試みで、人材育成につながりそう。とはいえ、「どこから手をつければ良いものか…」と悩んでいる人事担当者の方も多いでしょう。そんな方へのノウハウです。
スキルマップとしての社会人基礎力
経済産業相が提唱する社会人基礎力、よくできていると個人的には感じています。12の力(スキル)を3つのカテゴリーにまとめたもので、ほどよい網羅感があってスキルマップ作成のスタートポイントとしてお勧め。
ちなみに、「基礎力」という名前はあまり正しくなくて、あらゆる階層のビジネスパーソンに必要なスキル体系であると言ってもいいでしょう。
- 前に踏み出す力 (アクション)
- 主体性(物事に進んで取り組む力)
- 働きかけ力(他人に働きかけ巻き込む力)
- 実行力(目的を設定し確実に行動する力)
- 考え抜く力(シンキング)
- 課題発見力(現状を分析し目的や課題を明らかにする力)
- 計画力(課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力)
- 創造力(新しい価値を生み出す力)
- チームで働く力(チームワーク)
- 発信力(自分の意見をわかりやすく伝える力)
- 傾聴力(相手の意見を丁寧に聴く力)
- 柔軟性(意見の違いや立場の違いを理解する力)
- 情況把握力(自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力)
- 規律性(社会のルールや人との約束を守る力)
- ストレスコントロール力(ストレスの発生源に対応する力)
過去さまざまな取り組みがあったスキルマップ
もっとも、体系的なスキルマップを構築しようという試みは過去多くなされてきたようで、小林祐児さんによる労作、リスキリングは経営課題~日本企業の「学びとキャリア」考 (光文社新書 1245)
によると下記が紹介されています(一部筆者改訂)。
年 | 名称 | 提唱元 |
1999 |
エンプロイアビリティ |
日経連 |
2003 | OECD-DeSeCo | OECD |
2004 | 就職基礎能力 | 厚生労働省 |
2006 | 社会人基礎力 | 経済産業省 |
2008 | 学士力 | 文部科学省 |
2008 | 就業力 | 文部科学省 |
2009 | 21世紀型スキル | ATC21s |
2010-12 | ジェネリック・スキル | OECD |
2018 | 新・社会人基礎力 | 経済産業省 |
スキルマップは必要か?
一方で、上記の小林さんも指摘されていましたが、スキルマップは本当に必要か?という疑問はあります。実際、さまざまな取り組みがなされてきたことは、スキルマップには絶対的な正解はないことを示唆しているでしょう。
加えて、陳腐化の問題。今や時代はAI <人工知能>ですから、「人工知能と協働する力」抜きにはスキルマップは考えられません。すなわち、スキルマップは作成することそのものが目的ではなく、改訂も含めて活用することに意義があります。
OECD発のスキルマップ、DeSeCo
OECDが提唱するDeSeCoも見てみましょう。これは、Definition and Selection of Competencies:コンピテンシーの定義と選択と言うプロジェクトから生み出されたもので、3領域、9つのコンピテンシー(行動特性)からなります。
- 異質な集団で交流する
- 他者とうまく関わる
- 協働する
- 紛争を処理し、解決する
- 自律的に活動する
- 大きな展望の中で活動する
- 人生計画や個人的プロジェクトを設計し実行する
- 自らの権利、利害、限界やニーズを表明する
- 相互作用的に道具を用いる
- 言語、シンボル、テクストを相互作用的に用いる
- 知識や情報を相互作用的に用いる
- 技術を相互作用的に用いる
やや子供向け教育に主眼が置かれているので、こちらよりは経済産業省の社会人基礎力の方がスキルマップのスタートポイントとしては適切であると考えます。
ATC21sによる21世紀型スキル
ちなみに、子供向け教育という観点では、ATC21s (Assessment and Teaching in 21st Century Skills)が提唱した21世紀型スキルというのもひと頃話題になったので、こちらも紹介しましょう。
- 思考の方法 (Ways of Thinking)
- 創造性とイノベーション
- クリティカルシンキング (批判的思考)、問題解決、意思決定
- 学び方の学習、メタ認知 (認知プロセスについての知識)
- 仕事の方法 (Ways of Working)
- コミュニケーション
- 協働(チームワーク)
- 仕事のツール (Tools for Working)
- 情報リテラシー
- ICTリテラシー
- 世界で生きるスキル (Skills for Living in the World)
- シチズンシップ (ローカルとグローバル)
- 人生とキャリア設計
- 個人と社会的責任(文化についての理解と適応)
なお、子供向け教育におけるスキルマップの変遷は、Takeshi Yoshiiさんのnoteが充実しています。
DMG森精機さんのホワイトカラー生産性向上を知りたい
2024年10月23日(水)付の日経新聞によると、DMG森精機さんでは生産性向上による時短が進んでいるとのこと。この素晴らしい取り組みから日本の職場の課題を考察しました。
DMG森精機は生産性向上で利益もアップ
まずは、個人的な思い出から。私の父親は町工場を経営していたので、旋盤やフライス盤などの工作機械は子供の頃からなじみがあります。最近ではすっかりNC (コンピュータ制御)されたと理解していますが、日本の主要産業の1つであるのは間違いないでしょう。
さて、そのDMG森精機さんの取り組み。きっかけになったのはドイツのギルデマイスター社との経営統合だそうで、年間1,700時間の労働時間にも関わらず、日本のDMG森精機(年間2,300時間)と遜色ない成果を上げていることに衝撃を受けたとのこと。追いつくためには日本においても生産性の向上が必要とのことで、結果として労働時間が減っているにもかかわらず、2024年12月期まで3期連続で連結営業利益が向上しています。
ホワイトカラーの生産性向上の参考にしたいDMG森精機
記事中には触れられていませんでしたが、個人的にはホワイトカラーの生産性をどのように向上させたか気になるところ。個人的には、日本の生産性を落としている病巣はホワイトカラーの非効率にあると思っています。先日のメルマガにも書きましたが、いまだにパソコンを満足に使えない中高年とかいますからね。あるいは、会議の進め方も下手な企業が多い印象で、アジェンダを用意しないとか日常茶飯事。ましてや、議事録を事前に準備して会議に臨む人はまれで、そりゃ無駄が生じるよな、と思ってしまいます。
DMG森精機さんの取り組みなどをきっかけに、生産性向上が進むといいな、と心から思います。