メルマガ MBAの三冠王 Vol.275 最近の若手が嫌う意外なもの
もうすぐ4月で新卒の配属がある方も多いでしょう。
そんなとき、気をつけたいのが最近の若者が嫌う意外なもの。それが、
「ゆるい職場」
なんです。
え?どういうこと?と思いましたが、聞けば納得のその理由は…
イギリス国防省が使う「SFで未来を予測する法」~フィクショナル・インテリジェンス
未来が予測できたらビジネスに役立つのは言うまでもありません。そのための方法論として今話題になっているのがSF(サイエンス・フィクション)を使うことです。「え~、ホント?」と思った方も、イギリスの国防省が予算を使って取り組んだと聞くと興味を持たれるのではないでしょうか。「ストーリーズ・フロム・トゥモロー」と題された作品の紹介と、その背後にある社会の変化を解説します。
イギリス国防省のストーリーズ・フロム・トゥモロー
まずはイギリス国防省の取り組みから。2人のSF作家に、短編8編書いてくれって依頼したそうです。未来の戦場?あるいは戦争をテーマにしたものです。出来上がったものが、ストーリーズ・フロム・トゥモローと言うタイトルでネット上で公開されています。
短編の中の1つは、こんな感じです。ある兵隊さんが戦場から離脱する際、海に落っこちちゃった。そこに敵の小型潜水艦が迫る。何とか潜水艦の動きを止めようと、ハッチに手を突っ込んで潜水艦の頭脳である量子コンピューターのユニットを引き抜いた。そう、実は潜水艦は無人で、人工知能によって操作されていた。でもその兵隊さんのおかげで敵は無力化。名誉を讃えられて勲章が贈られた。ストーリーとして成立していて面白いです。
ちょっと、斜め読みですし、google翻訳だから間違っているところもあるかもしれません。ま、でも、だいたいそんな感じ。
他にも、人造人間。能力強化された兵士が、コンタクトレンズで色んな情報を読み取るとか、無人の自動爆撃機がロンドンを攻撃して300人以上の死者が出る、なんてのがあるそうです。
まぁ、たしかになあ。未来の戦場を予測するには役立つかもなぁ、と思いました。なにせスポンサーは国防省ですからね。面白半分ではないでしょう。フィクショナル・インテリジェンスっていうらしいですけどね。
戦争の概念が変わる世界
正直、未来を予測する方法としてSFを使うと聞いて、ちょっとシラけました。ホントかよ。あ~、はいはい、よくある話題づくりねって。以前このライブ配信でも、「超予測」って言う方法論を紹介して、例の「歴史に学ぶ」ってやつね。あれは納得。でも、SFか~、と思っていたんです。
でも、考えてみると、そのくらい戦争のあり方が変わってきたってことかもしれません。たとえば。たとえば、ウクライナ。
圧倒的国力・兵力を持つロシアに対抗しているじゃないですか。もちろんそれは、祖国防衛戦という士気の高さもあるんだろうけど、戦術、もしくは戦い方が違ってきているんでしょうね。データ分析で敵の位置を把握して、一撃で無力化してすぐ離脱、みたいな行動に。こう、情報に基づいたゲリラ戦、スマートゲリラ戦、みたいな。
しかも、そのデータ収集とウクライナ兵同士の通信のために、イーロン・マスクさんの会社のスターリンクっていう衛星電話サービスが使われているってのは、もうなんか、SFの世界っぽい。これ、映画だとマスクさんが闇堕ちして、スターリンクをロシアだけに使われるようになる、なんてストーリーがいかにもありそうです。
あるいは、米国主導の「テロとの戦争」。アフガニスタンやイラクでは、米軍は相当苦労したみたいです。司令部からの指示命令で動くのではなく、現場の人間の判断がより重視されるようになってきた、みたいな話は聞いたことがあります。
私たちがイメージする軍隊制度って、ナポレオン時代に完成されたって言われてますね。今から200年前ぐらい。フランス革命後の国民軍の成立ですよね。いずれにしても、かなり昔。それが今の情勢にあわなくなって、未来を予見するためには、SFぐらい突飛な発想が必要になってくるんだなって言うのは納得しました。
人々の願望を表す「ホミニッド」
じゃあ、自分でも読んでみよう、というか、最近読んだSF小説を思い返すと、印象に残ったのが「ホミニッド」って作品。いわゆるパラレルワールドものですが、もうひとつの世界はネアンデルタール人が進化して文明を築いている。逆に私たちホモサピエンスは存在しないって言う設定。
なんだか、ネアンデルタール人は平和主義者だったらしくて、我々よりもよっぽどいい、それこそ戦争がないという観点で素晴らしい社会を作っているという設定でした。
これ、ダイレクトに未来予測ではないけれど、いま、多くの人々が持っている社会への不満、あるいは欲求が詰まっているように見えますね。これをビジネスに役立てるとしたら、これから求められるのは「癒やし」である、なんて方向に行きそう。そういえば、以前のライブ配信で紹介したQuiet Quitting、「静かなる退職」ってのも関係ありそうですね。ひょっとしたら、あくせく働くのは時代遅れになるのかもしれません。
ちなみに元のホミニッドに戻ると、ストーリー的にはちょっとね。こう、破綻しているっていうか、「そりゃないだろ」って言うところもありますが、ご興味がある方はチェックしてみてください。私も、今後意識的にSF作品を読んでみたいと思います。
メルマガ MBAの三冠王 Vol.274 Zoom録画に満足できない人にお勧め
Zoomの録画機能、とても便利なのはご存じの通り。
ただ、「画質」には不満があります。
まぁ、そもそもがZoomはリモート会議のツールなので、しょうがないと言えばしょうがないのですが…
もっといい録画ソフトはないのか…
そんな方にお勧めがOBS Studio (オービーエス・スタジオ)です。
論より証拠、まずはこの動画をご覧下さい(音声はカットしてあります)。
右下にワイプ、左の方のアニメーションをご確認いただけると思います。
こんな動画が簡単に作れます。
しかも、無料。
もちろん、私がZoom録画をあきらめて、このOBS Studioをオススメするわけは他にもあって…
(さらに…)
日本の人事を「先読み」する~アメリカ発の人材マネジメント情報ソース、マル秘リスト
1 on 1やオンボーディング、さらに古くはコーチングなど、日本の人材マネジメントはアメリカを「後追い」しています。と言うことは、アメリカ発の人材マネジメントを知れば、日本の「先読み」ができるのです。とはいえ、チェックすべき情報は膨大。その中から日本語・英語問わず、クオリティの高い情報ソースを紹介します。具体的には、下記が全リストです。
ATD、Association for Talent Developmentのブログ、ニューズウィーク、クーリエ・ジャポン、ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー。カーネギーメロン大学や個人のブログ。
アメリカを後追いする日本の人材育成
先日、オンボーディングの勉強会の講師をしました。そうするとある方からは、「いや、木田さん、さすが情報通ですね。オンボーディングについても詳しいなんて」ってお褒めの言葉をいただいたのですが、実は種があります。それが、アメリカの人事の業界団体、ATDのブログをチェックすることなんです。他者に先駆けて人材育成法をアップデートしたい方は、最後までご覧下さい。
人材育成では、アメリカ発の手法がよく採り入れられます。最近で言えば、1 on 1、あるいはオンボーディング、はたまた、「ディーセントワーク」なんて言葉も生まれています。
世界最大の人材育成カンファレンスATD
こういう最新トレンドをチェックする方法が、ATDのブログをチェックすることなんです。ATDってのは、Association for Talent Development。タレントって言っても、テレビの芸能人ではないです。能力って意味。つまり、能力開発の業界団体で、世界最大のものです。
このサイトの中にブログがあるんですけど、そこを定期的にチェックすると、へぇ~、みたいのが分かります。たとえば、オンボーディングに関しても、「なるほど、最近はビデオによるオンボーディングに注目が集まっているんだな」とか、「オンボーディングの進化形として「エバーボーディング」なんて言葉も出てきたんだな」とか。
あとで概要欄にATDのサイトなど、この動画で紹介する情報源を掲載しておきますね。
という話をすると、「私、英語苦手ですから」って言う人がいますが、大丈夫です。google翻訳がありますからね。私だって、日本人にしては英語ができる方だと思いますけど、ブログを斜め読みするときには翻訳してざっと読みます。
なんでかって言うと、正直、ATDのサイトに掲載されている記事のクオリティは玉石混淆。っていうか、石の方が多い印象。あれ、きっと営業目的で寄稿している人が多いんでしょうね。最初はフンフンって読んでいても、気づけば自社サービスの紹介になっていて、「おいおい、宣伝かよ」って思います。だから、斜め読み。もし面白い記事があれば、逆に英語で読み直してみる、なんてことをやっています。
ちなみにこのATD、オンラインだけじゃなくてリアルのイベントもやっています。というか、そもそもは業界団体みたいな位置づけですね。毎年毎年大きい、1万人以上の参加者を集めるイベントをやっています。名前は、ICE: International Conference & Expoって言います。
私も、2019年のカンファレンスに参加しました。参加費がお高くて、20万円ぐらい。加えて、ワシントンDCで開催だったので、そこまでの旅費と宿泊代。結構いいお買い物でしたけど…
内容は、正直言って期待外れですね。あんまり大きな声じゃ言えないけれど。カンファレンスと言うからには、色んなセッションがあるわけじゃないですか。でも、そこに登壇する人のレベルがね。これ以上は、あまり言いませんので、もしご興味がある方はお問い合わせいただいたら、個別にお話しさせていただきます。
なので、ATDはオンラインでチェックしておけばいいかな、という感じです。そこで面白い記事を見たら、その筆者の人に直接連絡を取ればいいわけですからね。いまなら、スカイプ打合せもあるし。
ATD以外の情報ソース
さあ、ではATD以外の海外情報のソースです。まずわかりやすく日本語での出版物。これは二つで、ニューズウィークとクーリエ・ジャポンです。日本の媒体は、海外の情報がやっぱり手薄になるので、アメリカ発のニューズウィークとクーリエ・ジャポンはフランス発なのかな?切り口がちょっと違って面白いです。
では次。ハーバード・ビジネス・レビュー。HBRって略してますけど、あのハーバード・ビジネススクールの出版部門が発行しているので、王道的なものですね。ただ、ときどき微妙な記事が載っているのが善し悪し、という感じはありますけれど。ん?日本だとダイヤモンド社さんが発行しているのか。ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビューって言いますね。
では次。英語の情報源も。これはブログとかですかね、やっぱり。テクノロジー系を押さえるために、カーネギーメロン大学の「ユニバーシティー・ニュース」ってのは押さえています。あとはEdTech Magazineか。
ホントは個人ブログも押さえておいた方が良いんですけどね。ちょっとそこまでは手が回りきっていないかな。お名前だけ挙げると、テリー・グリフィスTerri Griffith、ジョッシュ・バージン JOSH BERSIN、デイブ・ウルリッヒ Dave Ulrich、あ、もちろんリンダ・グラットン先生もLynda Gratton。リンダ先生は、例のワークシフトの著者ですけどね。実は私の恩師の一人でもあるんですよ。もうね、リンダ先生のおかげで、ロンドン・ビジネススクールから奨学金をもらえたぐらいの勢いで、恩人ですね。
では、まとめます。日本の人事トレンドの先読みをするためにはアメリカの情報をチェックするといいですよ。そのためにオススメがATD、Association for Talent Developmentのブログをチェックすること。それ以外には、日本語媒体ではニューズウィークとクーリエ・ジャポン、ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー。英語媒体では、カーネギーメロン大学や個人のブログ、となりました。もしご興味をお持ちいただけたら、ぜひチェックしてみて下さい。
メルマガ MBAの三冠王 Vol.273 褒めると叱るの割合、正解は○対1
部下をお持ちの方、褒めると叱るの割合、正解があるってご存じでしょうか?
それが、
4対1
です。
ワシントン大学のゴットマン博士が提唱するものですが、他の人もだいたい似たようなことを言っているので、これが正解で間違いないでしょう。
ただ、ゴットマン博士はさらに深いこと言っていて…
【関連動画:ネガティブなフィードバックのやり方】
イノベーションには法則があった!~異業種に学ぶビジネスモデル変革法
「イノベーション」という言葉、最近ビジネスの現場でよく聞かれます。日本企業が再度成長の軌道に乗るためには必要だと言われていて、実際に大企業内でイノベーションに取り組んでいる方もいるでしょう。難易度が高いと思われがちですが、実はそこには「成功法則」があります。それが、異業種から学ぶこと。具体的には、次の5つの観点で考えます。1. 顧客セグメントを変える、2. 価格/収入構造を変える、3. 顧客への提供価値を変える、4. 外部とのコラボレーション、5. バリューチェーンで考える。下記の会社の実際の事例をもとにこの方法論を分析します。ベネッセ、ワークマン、紳士服のAoki、西松屋、マイクロソフト。
顧客セグメントを変えることでイノベーション
まず、イノベーションの代表事例としてはベネッセさん。そう、あのチャレンジ、あるいはしまじろうのベネッセさんです。え?どういうこと?と思ったかもしれませんが、実は昔は「福武書店」という名前で、学校向けの生徒手帳を作っていたんです。
ただ、そのビジネスだけだとここまで大きな企業には慣れなかったですよね。少子高齢化でマーケットは小さくなるわけだし。
ところが。ところが、あるとき福武書店の人は考えたわけですね。生徒手帳を作っている関係で、学校によく出入りして、問題集とかをよく見ている。そうすると、良問と悪問、つまり姓との学習につながるいい問題と、ダメな問題が分かってきた。自分たちで問題集を作って販売したら、売れるのではなかろうか?と
そしたらドカンとあたって、大企業にまで成長したんです。まさにイノベーションを体現しています。
これ、結局何かって言ったら、顧客セグメントを変えたわけです。それまでB2B、つまり法人、というか学校だからB2スクールみたいだったビジネスを、消費者向け、つまりB2Cに変えたのです。そこからイノベーションが生まれた、と。
しかも、こういう顧客セグメントの変更は、他の業界でも応用可能です。最近の例でいえば、WORKMANさんとかそうかもしれません。もともとは作業着を販売していたわけです。そうすると、一般消費者は買わないですよね。工事業者さんが買いに行くわけで。
でも、あるときこれもワークマンの方が考えたんでしょうね。ウチの商品、B2Cにも売れるんじゃないか?って。それがあたって、ドカンと業績アップです。
ということは?ということは、イノベーションには勝ちパターンがあるわけです。他業界でうまく一体ノベーションの例を自業界に持ち込む。ちなみに、「他業界で」というところがポイントです。自業界だったら、「あ、あの会社、あんなことやっているな」っていうのは見えているし、当たり前の発想しか出てきません。そうではなく他業界。「へぇ~、あんなやり方があるんだ」というのを真似るんです。
イノベーションのための5つの視点
その真似をする際の観点を、ここでは5つに絞って説明をしていきます。先ほどの顧客セグメントを変える、に続いて二番目は、2. 価格/収入構造を変える。これは分かりやすくいうとサブスク。これまで売りきりだったサービスを定額課金にすることによってお客様は買いやすくなる。企業の側から見ると、顧客獲得コストが下がるし、継続的に課金できるのでライフタイムバリュー、つまりお客様の生涯価値も高くなって、うまく行けばいいことづくめです。
もちろん、うまくいかない場合もあります。例えば、紳士服のアオキさん。スーツのサブスクを始めたけれど、うまくいかなくてあっという間に撤退しました。女性向けのアパレルではサブスクがうまくいっているんで、それを「他業界」の成功事例とみて、イノベーションに取り組んだんでしょうね。
ちなみにこれ、世の中の評論家の中には失敗事例ととらえている人いますが、私はイノベーションの成功事例だと思っていますけどね。だって、撤退の意志決定のスピードが素晴らしいじゃないですか。たしか、サービスを始めて半年ぐらいで撤退したんじゃないかな。パッと始めて、うまくいかないと思ったらパッとやめるという、イノベーションの素晴らしい事例です。
では、イノベーションの観点3番目に行ってみましょう。それが、「顧客への提供価値を変える」です。有名なところでは、格安航空会社。機内でのおもてなしサービスをなくして、代わりに価格も下げたんです。そういうのを求めていないお客様もいるわけですからね。ということは、提供価値を少なくする延べもイノベーションは成り立つわけです。
これを真似たかどうか分からないんですが、ベビー用品販売の西松屋さんでは、あえて接客を「しない」んですってね。つまりお店に行っても店員さんが話しかけてこない。いいじゃないですか。こっちも気楽に選べて。店員さんだって、お客様に声をかけてイヤな顔されるより、もっと有意義なことに時間を使えるでしょう。これまたウィン-ウィンなイノベーションの気がします。似たようなところでは、保険業界もそう見えるかな。ネット生命って、説明の手間を省いていますからね。従来型のビジネスモデルだと、生命保険の販売員の方がお客様のところに足を運んで詳しい説明をするというのが主流でした。それを省いて、その分保険料も安くしますよ、というイノベーションです。
最大手の日本生命さんも「はなさく生命」というブランドでネットに参入してますからね。2019年からだそうですけど、
では、イノベーションの観点の4つ目。「外部とのコラボレーション」。たとえばこれは、外部のアフィリエイターを上手に使っている例としてアマゾンさんとかがあたりますかね。アマゾン本社とはまったく関係ない外部の人間が、勝手にamazon上の商品を紹介します。この本、いいですよ、って。もし売れたらそのアフィリエイターさんにamazonから手数料が支払われる。モノが売れてアマ村もハッピー、手数料をもらえてアフィリエイターもハッピーです。
こういう外部とのコラボレーションをもっと上手やっているのが、google。というか、youtube。そう、外部のyoutuberに動画をたくさん掲載させて、そこで視聴者を惹きつける。結果として自分たちの広告プラットフォームとしての価値が上がる、というのを本当によく作り込んでいます。やっぱりこれも、win-win。少なくともこれまでは。
バリューチェーンで考えるイノベーション
では、5つ目。「バリューチェーンで考える」です。まずバリューチェーンですが、ひとつの製品が最終消費者に届くまでに、どの様なビジネスが存在するかを表したものです。例えばパソコン業界で考えてみましょう。パソコンが消費者に届くまでには、当然その販売業者さんがいます。ビックカメラさんとかですかね。
でも、その背後には、パソコンメーカーさんもいます。HPさんとか。そしてその背後にはパソコンのパーツを作っているメーカーさんがいます。インテルさんとかNvidiaさんとか。さらにその背後には、ソフトを作っているマイクロソフトさんがいて…そうやって、順繰りに業界の関連をたどっていくのがバリューチェーン。チェーンは鎖のチェーンです。まるで鎖のように連結して、ひとつの業界をなしていることを表すわけです。
このバリューチェーンで考えると、イノベーションが思いつけるんですって。例えば、先ほどのパソコン業界。ビックカメラ、HP、マイクロソフト…と挙げてきましたけど、あるときマイクロソフトさんが考えたわけです。「ウチだったら、ソフトだけじゃなくてパソコン本体も作れるんじゃない?しかも、それを直販で販売できるよね?」って。
それでできたのが、サーフェスです。あれ、ソフト、つまりWindowsは当然マイクロソフト製ですが、ハードウェアもマイクロソフト製ですからね。バリューチェーンを統合することによってヒット商品を生み出した、という事例です。
ということで、まとめてみましょう。まず、イノベーションを起こすには勝ちパターンがある。それは、異業種での成功事例を自分の業界に持ち込むこと。その際の観点は5つ。1. 顧客セグメントを変える、2. 価格/収入構造を変える、3. 顧客への提供価値を変える、4. 外部とのコラボレーション、5. バリューチェーンで考える。
管理職だって転職する時代~マネジメント・オンボーディングの新たな課題
管理職(マネージャー)として転職することは、プレイヤーとしての転職よりもハードルが高いものです。したがって、より手厚いオンボーディングが必要になります。具体的には、オンボーディングの3要素、業務知識、エンゲージメントUP、社内人脈に加えて「影響力の源泉」の構築を手伝うのがオススメです。なぜこの影響力の源泉が必要なのか、そして具体的な取り組みを解説します。
ハードルが高い管理職としての転職
管理職として転職する場合、プレッシャーはかなり大きいものです。「即戦力」もそうだけど、お金の面でもそうなんです。え?どういうこと?給料?うん。給料もありますけど、それ以上に採用費がかかっています。仮にその管理職を、ヘッドハンター経由で採用したとするじゃないですか?そうすると、ヘッドハンターへの謝礼っていくらかご存じでしょうか?相場は、転職者の給料の30%。たとえば、年収1,000蔓延の人が転職したとすると、300万円をヘッドハンターに払うことになります。そりゃあ、転職してすぐ活躍して欲しいと思います。
とはいえ、いきなりというのはキツいです。しかも、プレイヤーとしての転職よりもマネージャーとしての転職の方がハードルは高いです。なぜか。
なぜならば、マネージャーって言うのは、「他者に影響力を発揮すること」が仕事の中心だから。部下に対して影響力を発揮して、やる気を高める、能力を高める。あるいは他部署との調整です。あっち部部署の課長と話して、仕事の割り振りを適正にする。
逆に言うと、影響力が弱い課長の下で働く部下はかわいそうです。仮にここに営業部があって、マーケティング部があったとしましょう。マーケティング部の課長が、影響力を発揮するのがヘタで、他部署との調整とかできない人だとしましょう。このマーケティング部で働く人は苦労します。本当はこの仕事は営業にやってもらうべき。課長に言うわけです。「課長、営業部の○○課長と話して、あっちに引き取ってもらってください」。ところが、うまくいかずにやっぱりマーケティング部で仕事をやることになる。
「あ~あ」。あの課長の下では仕事がやりにくいよなぁ、と感じるのは当然です。
となると?となると、転職してきたばかりの課長にとってはハードルが高くなるわけです。例えば先ほどのマーケティング部の課長に着任。じゃあ営業部の課長と調整…って言っても、相手がどんな人かわからない。何を材料に交渉すればいいか分からない。どれだけ優秀な人でも、入社したばかりで他者に影響力を発揮するのは難しいものです。そして、ここでオンボーディング。じゃあ、この新任の課長が、仕事になじんで成果を上げるようになってもらうため、会社から積極的に取り組みをしましょうよ、となるわけです。
オンボーディング勉強会でいただいた質問
これ、実は先日のオンボーディング勉強会で話題になりました。私が講師をやっていたわけですが、当初想定していたのは、新卒で、あるいはプレイヤーとして中途入社した人。ところが参加者の方から、「管理職の転職者の場合はどうしたら良いですかね?」と質問をいただいたんです。
言われてみれば、確かに。そういうケースも増えてるし、今後ますます増えていくでしょう。で、もちろん基本は同じです。オンボーディングの3要素、業務知識とエンゲージメントと社内人脈を広げてあげましょうよ。そう回答しました。ただ、その後いろいろ研究しました。アメリカではどうなっているのかは、とかね。やっぱりオンボーディングに限らず、アメリカの事例は参考になりますからね。それで出てきたのが、先ほどの影響力の話なんです。仮にここでは、管理職向けのオンボーディングをマネジメント・オンボーディングと呼びます。このマネジメント・オンボーディングでは3つの要素では十分じゃなくて、4つ目、影響力を発揮するのを手伝ってあげましょう、となります。
では、どうやって?はい、ここで出てくるのが他者への影響力のフレームワークです。このライブは指針の別の回で、「社内政治力」として取り上げました。実は対社に影響力を発揮するためには5つの要素がある、と解説しました。1. 社内の情報通になる、2. 権威を借りる、3. リソース配分の権利を握る、4. 同意見のグループを形成する、5. 専門スキルを高める、ですね。
こうみると、改めて転職してきた管理職の難しさがわかります。1. 社内の情報通になる。これは、ムリ。そもそも情報を知りませんから。3. リソース配分の権利を握る。これも短期的には難しいですね。4. 同意見のグループを形成する。これも、誰がどんな意見を持っているかわからないとやりにくいです。
管理職向けオンボーディング、マネジメント・オンボーディング
ということで、使えるのは2番目の「権威を借りる」。管理職として転職してきた人は、その上司、つまり課長が転職者だったら部長、部長が転職者だったら本部長、その人が、権威を貸してあげるわけです。「後見人」じゃないですけど、後押ししてあげる。それも、こっそりとじゃなくて、目に見えるように、この人に権威を課しているよ、というのを周りに示していきましょう。
そして、影響力に関してももうひとつ使えるのが5. 専門スキルを高める。これは、その業界の専門知識ではないです。これだといつまでたっても部下に敵わない。ではなくて、マネジメントスキルです。部下が成果を上げるように指導・育成するスキル。これを磨いて、「あの上司の下では仕事がしやすい、成長できる」と部下が思ってもらえればしめたもの。その後は仕事がやりやすくなります。
ということで、まとめてみましょう。まず、プレイヤーとしての転職よりもマネージャーとしての転職の方がハードルは高い。だからこそ、マネジメント・オンボーディングが必要。マネジメント・オンボーディングでは、業務知識、エンゲージメント、社内人脈というオンボーディングの3要素に加え、影響力の源泉を構築するのを手伝ってあげるといい、となりました。
メルマガ MBAの三冠王 Vol.272 「幸せになりたい」のワナ
御社の社員の方、幸せそうに働いていますか?
…と聞かれてドキッとした方にチェックいただきたいのが「幸福学」。
名前だけ聞くとオカルト?と思われるかもしれませんが、ちゃんとした心理学の一分野です。
その名の通り、「どうやったら幸せになれるか」を追求したもので、面白い研究結果があります。
なんと、
「幸せになりたい!」と願う人はかえって幸せになれない
のだそうです。
え?
と最初は思いましたが、言われてみれば納得のその理由は…
サッカー嫌いに知って欲しい、サガン鳥栖の5つの魅力
明後日に開幕を控えたJリーグ2023年シーズン。その中からサガン鳥栖の魅力を紹介します。Jリーグに詳しくない方からしたら、「地方の1クラブでしょ?」と思うかもしれませんが、実はそこには多くの魅力が隠れています。ここでは下記の5つの魅力に絞ってお届けします。魅力その1:監督がスゴイ。魅力その2:アナリストがスゴイ。魅力その3:育成力がスゴイ。魅力その4:輩出力がスゴイ。魅力その5:選手がスゴイ。
監督が魅力のサガン鳥栖
魅力その1。監督。川井健太監督。インタビューとか読むと、すごく深く考えている様子が伝わってきます。今でもおぼえているけど、昨年のシーズン夏の、8月31日の川崎フロンターレ戦の後。相手は強敵、川崎ですよ。0-4でボロ負けです。私なんかは、力でねじ伏せられたって感覚で、ボー然としてました。試合後。
ところが。川井健太監督のコメントがよかった。抜粋してみます。「川崎Fさんが調子を上げている中で、対策を練って臨むというのも選択肢にありましたが、われわれは川崎Fさんを見習いたいと思っているので、ここでうまくかわしても何も残らない感じだなと思った。」
そう、交わすんじゃなくて、真っ向勝負。いつかは川崎を追い越そうと言うことで、気概を感じます。
ちなみに、冒頭にも紹介しましたけど、日経新聞のインタビューから言葉を拾ってみましょう。「旗をポンと一本だし、「ここに来てくれ」の方が良い。この状況では赤の旗、このときは青、別では黄色などといろいろ言うと昨期のような迷いのないサッカーにはならない」
なんか、ビジョンを示すと言うことで、ビジネスにも通じるものがあります。川井監督と話すこと、できないかな。「強者の戦略、弱者の戦略」とか、聞いてみたいな。
では、魅力その2。アナリストの玉木さん。いや、インタビューとかで知っているわけではないんですが、この人、スゴイ人なんじゃないかと私は勝手に想像しています。ウチみたいな規模の小さいクラブでは、戦術はキモになると思うんですよ。ちょっとね、昨期の川井監督の話とは矛盾するけど。それを支えているのが玉木さんだと思います。
チームに来られたのが2021年、監督は前任のキムミョンヒ監督時代ですけどね。その頃から、チームの戦術がよくなってような気がしています。1996年生まれだから、まだ20代?お若い方ですけど、玉木さんの功績もあったんじゃないかな、なんて勝手に想像しています。応援しています。
育成力を支えるスタッフの熱意
では、魅力その3。育成力がスゴイ。15歳以下とか、18歳以下とかのカテゴリーで日本一になったりして、その中からトップチームに上がってくる選手もいる。ウチみたいな小さいクラブは、選手の流出も多いのが正直なところ。「え~、また名古屋にとられたの?」なんてぼやきたくなるけど、それを埋めるかのように新しい選手がどんどん下の年代から上がってくるというのは、ものすごい魅力。中には、サガン鳥栖のアカデミーで育って、ドイツのバイエルン・ミュンヘンに移籍した選手もいるぐらいですからね。世界的にも育成力があるって言っても良いんじゃないかな。
ここも、アカデミーに関わっているスタッフの方の熱意が見えるようで、本当に頭が下がります。クラウドファンディング、またやってくれないですかね。私も一口乗りますんで。結局、こういう、クラブに関わっている人がみんなで同じ方向を向いているって言うのが、魅力なんでしょうね。
ちょっと微妙な人材輩出力
では、魅力その4。選手の輩出力。サガン鳥栖で活躍した選手がビッグクラブに移って、そこで活躍していると、ちょっと複雑ですけど、うれしいような、悔しいような気持ちになります。たとえば、昨季で言うと樋口雄太選手。あの名門鹿島アントラーズでバリバリのレギュラーとっていましたからね。あるいは、私が大好きな選手で、吉田豊選手。昨季まで名古屋で活躍されてました。そろそろウチに戻ってきてくれないかな。
では最後、魅力その5はもちろん選手。キーパーの「パギさん」ことパクイルギュ選手。プレーを見ても好きだったけど、youtubeのインタビュー聞いたらますます好きになりました。ディフェンスでは中野伸哉選手。昨季で言えば、夏の名古屋戦とかおぼえてます。相手のマテウス選手だったのかな?と、バチバチニやり合って一歩も引けを取らなかったのがカッコいいな、と。
そして、本田風智選手。あの、スペースに入ってくる動き。映像で見てて、「あ、ここ空いてるな~」と思うと、すーっと本田選手が入ってくるんですよね。で、必ず首を振って周りを確認。もう、こういうプレーだけでサッカーIQの高さが分かります。
メルマガ MBAの三冠王 Vol.271 転職組の上司にどう接する?
「ウチの上司は転職組だ」
そんな経験はあるでしょうか?
転職は、今や若手だけではありません。
管理職のポジションにある方が、別の会社に転じることも当たり前になりつつあります。
そうすると、「ウチの上司は、社外から転職してきた人だ」というのは、ますます増えるでしょう。
そんなとき、どう対応したらよいか…
昨日開催した「オンボーディング勉強会」で、いろんな意見が出たのでそれを紹介します。
メルマガ MBAの三冠王 Vol.270 TikTokデビューに向けて準備中
TikTokデビューしたい…
そんな風に思うことってありますか?
もちろん、目的はビジネス。
TikTokを使って動画をバズらせて、そこから売上につなげるというのが最近のマーケティングの流れ。
この「練習」として、私もさっそくショート動画をアップしました。
https://youtube.com/shorts/UpwEc57lOeQ
噛み噛みで恥ずかしいですけど、ね。
ただ、これはあくまでもサンプル。ここから私が目指したいのは…
MBAで学ぶ究極のタイムマネジメント~タスクの見える化と優先順位づけの「仕組み」
タイムマネジメントはあらゆるビジネスパーソンの悩みのタネ。それを解決するのがMBAで学ぶ方法論で、そのキモはタスクの見える化と優先順位づけにあります。…ただ、原則だけを知っても意味がないので、具体的な方法論を紹介します。スマホアプリのgoogleキープ、ポストイット、そしてノートを使った3層構造の方法論です。これを知れば、タイムマネジメントの達人になれること間違いなし。
タイムマネジメントできないと生き残れないMBA
MBAがものすごくハードなカリキュラムというの、聞いたことあるでしょうか?たとえばこの教科書。学期の最初に買うわけです。ちょっと思いますよ。うわー、ぶ厚いな。しかも、全部英語ですからね。当たり前ですけど。
ところが。授業が始まると、言われるわけです。じゃあ来週までに第1章から第4章まで読んできて、みたいに。え~っ!ですよ。1年かけてこの教科書を読むんじゃないの?
すると、先生は言うわけです。「本を読むって知識のインプットじゃない?そこには時間をかけても意味ないよね。むしろ、知識をいかに現場で使うか、それを討議するのに時間を使おう」。だから、教科書を読むのは超スピードだよ。
そうすると何が起きるかって言うと、在学中からタイムマネジメントが磨かれるわけです。というか、磨かざるを得ないです。そうじゃないとついていけませんからね。そんな生活を2年間していると、それはタイムマネジメントはうまくなりますよね。
ていうか、実はこれ、学校が意図的にやっています。学生に時間のプレッシャーをかけることで、ある意味タイムマネジメント上手にさせるわけです。MBAって研究者育成ではないですからね。あくまでも実務家養成です。実社会でも「使える」人材を生み出す工夫のひとつです。
googleキープでタスクの見える化
そこに改良を加えて、今私がやっている時間とタスクのマネジメント方を紹介します。まず基本は、自分がやるべき事を明らかにすること。そのために私が使っているのがスマホの音声入力アプリです。googleのキープというモノですけどね。
仕事をしながらは当然、食事の時も歩いているときも、思いついたから音声メモをとるんです。これ、意外と大事で、何かいいアイデアってふとしたときに思いつくじゃないですか。あ、あの問題、こうすれば解決できるよな、みたいな。
それを忘れちゃったらもったいない。だから、その場でメモ。しかも、googleキープの場合、音声を文字化してくれますからね。後で見返すのに便利。だって、いちいち音声を聞き直さなくて済むわけじゃないですか。一覧性が高いですからね。
そういう風に溜めたスマホ上のメモ、すぐ対処、処理できるときにはパッとやっつけますが、ちょっと時間がかかるときがあります。そしたら、書き写すんです。ポストイットに。これね。
もう、タイムマネジメントに使うポストイットは大きさが決まっています。5cm x 4cmのこれね。この1枚のポストイットにひとつのタスクを書き出します。それで、また可視化ですよね。
そして、そのタスクが終わったら、ポストイットをはがして捨てる。これ、見えます?捨てたのを溜めとくの。そうすると、いかにも「やった感」がでるじゃないですか。これがあるので、ちょっとめんどくさいタスクもやる気になるという効果があります。
ちなみに今、飯野先生の「仕事が早いのにミスをしない人は、何をしているのか?」って本を読んでいますけど、まったく同じことが書いてありますね。っていうか、これが元ネタだったかもしれません。飯野先生いわく、「このタスク終了後の丸めて捨てる感覚に優るものは、まだ私は知りません。今の時代にあえて付箋のTodoリストをオススメする理由も、この爽快感ゆえのものです」。まったく同感です。
3層構造で優先順位づけする
で、本当はこれ、ポストイットの位置を工夫して優先順位づけをすると良いですけどね。例のアイゼンハワー・マトリックスみたいに。アイゼンハワーさんってね、もともとは第二次大戦のアメリカの将軍で、ノルマンディー上陸作戦を成功に導いた人って言われています。そのアイゼンハワーさんが発明したのがタスク管理。
縦軸が重要度、横軸が緊急度、って言う風に軸を切って。重要か重要じゃないか、緊急か緊急じゃないか。当然一番大事なのはここ。重要で緊急度が高いモノですが、ポイントはここ。緊急じゃないけど重要度が高いものを忘れないようにしましょう、ということ。
私のこのポストイットは、そこまではやっていません。なんでかって言うと、緊急じゃないけど重要なモノって、どんどんたまっていくんですよね。あ、後でしっかり考えよう、みたいに。そうすると、ポストイットを貼る場所がなくなっちゃいます。だから、そういうものは、別のノートにまとめています。
ちなみにそこには、将来のことをいろいろと書いておくのね。たとえば、行ってみたいところとか。ほら、あるじゃないですか。旅行に行ってみたいんだけど、今は時間がない。それを忘れちゃうんじゃなくて書き留めておくわけです。このライブ配信の前に見返したら、こんなのが載っていました。アメリカのイエローストーン国立公園のオオカミツアー、北海道の犬ぞり体験、絶叫系アスレチック マッスルモンスターなどなど。いいですね。行ってみたい。
あ、もちろん、行ってみたくていったところもあります。たとえば、司馬遼太郎記念館とかね。大阪なんだけど、中心部からちょっとハズレていて行きにくいんで、時間がないと脚を伸ばせなかったですね。でも、行ってよかった。
司馬遼太郎ファンの方はご存じだと思うんですけど、例の、書庫の上の方に坂本竜馬の影が現れたってヤツも、この目で見てきましたからね。うん。ファンならば一度は行くのがお勧めです。
ということで、まとめてみましょう。MBAで学んだタイムマネジメント、重要なのはタスクの見える化と優先順位づけ。そのためには3層構造で整理していて、第1層、超短期はgoogleキープ、第2層、中期はポストイット、第3層の長期はノートにまとめています。
ぜひ参考にして、ご自身なりのタイムマネジメントの手法を編み出して下さい。
研修の目的は、現場での行動を変えること~先週の「MBAの心理学」
先週の「MBAの心理学」は研修の定着。研修で学んだことが頭の中に焼き付いて、日々の行動が変わり、ビジネス上の成果に結びつき、最終的には企業価値増大につなげる。
【MBAの心理学】ルイジアナ大学チャタヌガ校のバークは、研修効果を高めるためには双方向で学習者参加型研修が重要と検証。また、ミシガン州立大学のウェクスラーは研修後半では研修後の目標設定が重要と検証した。 #心理学 #MBA pic.twitter.com/JETfyORHdV
— 木田知廣 (マサチューセッツ大学MBA講師) (@kidatomohiro) January 30, 2023
もとの論文をあたってないのでアレですが、この提言は若干狭い(ピンポイント)過ぎる気がする。一口に「研修後の目標設定」と言っても、幅広いわけで。
あと、「学習者参加型」の定義もけっこう重要。直感的には、欧米のそれと日本人が求めるものは異なる気がする。マイケル・サンデル先生の講義とか、いつもモヤモヤ感が残らない?この観点では、
【MBAの心理学】株式会社ネットマンの社長永谷研一は、法人研修においては目標設定から行動計画がもとも重要と説く。その失敗の理由として、1. 問題抽出が甘い、2. 課題設定の誤り、3. 成果設定がないとのこと。 #心理学 #MBA pic.twitter.com/qqwFaRSVn1
— 木田知廣 (マサチューセッツ大学MBA講師) (@kidatomohiro) January 31, 2023
こっちの方がピンとくるかな。これをどう乗り越えるんだという議論は必要だけど。
同様に、こっちも実用的。何が何でも無理矢理、というわけじゃなく、ワークブックを見直すだけでも良いというのは心強い。
【MBAの心理学】オハイオ州立大学のテューズは研修の定着として再トレーニングの他にも、1.ワークブックを見直して自身の行動を振り返る「自己学習(セルフコーチング)」、2.同僚や部下からのフィードバックを受ける「他者評価(upward feedback)」が重要であると検証した。 pic.twitter.com/idhm7KRvZv
— 木田知廣 (マサチューセッツ大学MBA講師) (@kidatomohiro) February 2, 2023
実際の現場では、動画をからめるともっと効果的だと思うけど。それも、一般的な動画でなく、アダプティブ・ラーニングの動画なら最強。
メルマガ MBAの三冠王 Vol.269 「部下育成相談室」オープン!
部下をお持ちの方、指導・育成に苦労していませんか?
- 言い訳が多い
- すぐ「どうしたら良いですか?」と聞いてくる指示待ち
- 心構えがなってない
などなど。
そんな悩みに解決する「部下育成相談室」をオープンしました。
https://corporate.ofsji.org/kouza/leadership/bukaikusei/
こまった部下のタイプ別に、解決策を紹介しています。
なぜこのページをつくったかというと…
オンボーディングとOJTは何が違う?~アメリカ最新事情から読み解く「辞めさせない」マネジメント
オンボーディングとは経営学の考え方で、新たに組織に参画した方が1日も早く活躍できるようなサポートのことを指します。似たような考え方としてOJTというものがあり、若干混同されて使われていますが、基本的にはオンボーディングの方がより広い概念です。なぜならば、オンボーディングは3つの要素が含まれて、それが1. 業務知識を教えること、2. 心理的エンゲージメントを形成すること、3. 組織内人脈を広げること、です。一方、OJTはこの中で最初の業務知識を伝えることに絞られているからです。この違いを踏まえ、オンボーディングの本来的な目的を達成する方法論を、アメリカの事例も参考にしながら解説します。
中途入社にはオンボーディング?OJT?違いは?
先ほどの説明、オンボーディングの方が広い概念であるという話をすると、ときどきこうおっしゃる方がいます。いや、それ、OJTって言う名前だけど、ウチもやっているよ。業務知識を教えるのは当然として、社長とのランチ会でエンゲージメントを高めたり、社内人脈を広げる取り組みも…
そうですよね。実際私も、ライブ配信の別の回で、新入社員のオンボーディングでは内定式から始まるという話をしました。
でもね、ここで考えていただきたいのは、中途入社の人なんです。新卒入社の人と同じぐらいの手厚さでやっているでしょうか?答はたぶんノー。もちろん、入社直後の簡単な説明はあるけれど、どちらかというといきなり現場へドン。はい、結果を出してちょーだいね。だって、前職で成果をあげたんでしょ?
ちょっとキツいです。中途入社の方には。これでは、心理的なエンゲージメントが高まる余裕はないかもしれません。
アメリカで広まる「エバーボーディング」
だから、実は今アメリカでは新たなキーワードが出てきています。それが、「エバーボーディング」。「エバー」っていうのは、ずーっと。永遠に、というニュアンスです。つまり、オンボーディング?入社したときだけの取り組みではなく、ずーっとエンゲージメントを高める取り組みをしていきましょうよ、という流れなんです。アメリカでは転職が当たり前ですからね。続けていかないと、エンゲージメントが下がって、はい、また転職しまーす、みたいなことが起こってしまうんでしょうね。
ちなみに、今の時代リモートワークも本格化していますから、余計たいへんなんですってね。オンディングでエンゲージメントを高め続けるのは。だから、ハイブリッド・オンボーディングと言っていますけれど、対面の機会があればもちろんですけど、録画したビデオを使ったり、Zoomなどのリモートツールを使って様々なオンボーディングの取り組みがされています。
そして、その行き着く先はメタバースでしょうね、きっと。もともと私は、人事分野でのメタバース導入は否定的です。いや、これ、意味あるの?って、ライブ配信の別の回でもお伝えしました。
ただ、ことオンボーディングに関しては、メタバースはアリだと思います。没入感って言うけど、本当にその世界の一部になって、その世界の中で他の社員と交流すると、エンゲージメントは高まりそうですからね。
実際、オンラインゲームでもあるそうじゃないですか。チーム対戦形式だと、チームメイトと心理的に密接な感覚になるらしいですからね、メタバースもアリです。
オンボーディング・メンターはコーチングで
ま、それはちょっと未来の話として、まずはオンボーディング・メンターを付けるところからスタートです。つまり、新たに組織に参画した方が、最初に聞ける人を割り振ってあげるわけです。
ただ、オンボーディング・メンターの方も、困るんですってね。いや、メンターを割り振られたけど、どういう風に接したら良いの?
ましてやですよ。サポート・パラドックスという問題があります。これ、何かというと、あまりにも気遣いしすぎると、相手の人がいつまでも「よそ者」という感覚が拭えないんですって。まあ、確かになぁ、と思います。こうね、オンボーディング・メンターの人が、聞いちゃうんでしょうね。「大丈夫ですか?」、「慣れましたか?」、「困りごとはないですか?」
言われた方は、感じちゃいますよね。「あ、まだ周りからは、なじんでないって見られているんだな」って。ちょっと残念な状況です。
似たようなこと、私も体験したことがあります。海外に行ったときね。イギリスに行って、1年ぐらい経つと、なじんでくるわけじゃないですか。英語も、ボチボチと話せるようになる。現地の人ともね、交流するわけです。そうすると、言われるわけですよ。「君、英語うまいね」って。
それを聞いて私は、「あぁ、自分もまだまだだな」って思ったわけです。だってそうですよね。ネイティブに対しては、「英語うまいね」って言わないわけじゃないですか。それを言うってことは、「外国人にしては」英語うまいよねっていう感覚があるわけです。
もちろん、相手の方も悪気があるわけじゃないです。でも、悪気がないだけに、余計疎外感は感じますよね。
で、オンボーディングに戻って、これがサポート・パラドックス。相手を気遣おうという態度が、逆に相手に疎外感を抱かせてしまうとなります。
だから、オンボーディング・メンターの方は戸惑うわけです。え?じゃあ、どうやって接したら良いの?って。
結論としては、コーチングです。新たに組織に参画した方に接する際、「問いかけ」中心で会話をする。しかも、相手と自分の発言量が1:1になるようにすると良いですよ、というのがお勧めです。
具体的な方法論は、また勉強会でお話ししたいと思います。2月15日(水)、16日(木)の14:00 – 15:00です。後で概要欄に申込みページのURLを掲載しておきますので、そちらからお申し込み下さい。
「言い訳」する部下への対処法ってあるの?~先週のMBAの心理学
先週の「MBAの心理学」は村中先生の〈叱る依存〉がとまらないからの知見を紹介しています。全般的な感想としては、「分かったような、分からないような」という感覚で、ビジネスの現場で使えるのかな?と言う疑問が残りました。
村中先生はたしか障害児の教育に携わられていたような気がして、その世界では必要かつ正しいものの見方なのだろうと想像します。ビジネスでも上司-部下の関係のヒントになるかと思ってチェックしました。ただ、ビジネスの場合、部下はもっと自立した存在と捉えてよいかと思います。上司が「叱らざるを得ない」状況にしてしまう部下ってどうなの?と。大前提として、
【MBAの心理学】学習が進むためには自己決定が重要。「自分で決めた」、「自分がしている」という感覚が脳内の報酬系を刺激して自己学習を促す。それはまるですごろくで遊ぶとき、他人が賽を振るか、自分が賽を振るかのちがい #心理学 #MBA pic.twitter.com/MzhPIEp0Qn
— 木田知廣 (マサチューセッツ大学MBA講師) (@kidatomohiro) January 26, 2023
というのは賛成です。結果、
【MBAの心理学】イェール大学のエイミー・アーンステン博士によると、「戦うか逃げるか」の防御システムは学習にはつながらない。恐怖や苦痛で扁桃体が活性化すると、知的な活動を司る前頭前野の活動が阻害される。すなわち、子供のしつけで恐怖を使うことは否定される #心理学 #MBA pic.twitter.com/icdUl5ojcZ
— 木田知廣 (マサチューセッツ大学MBA講師) (@kidatomohiro) January 16, 2023
と言うことになるわけですね。
【MBAの心理学】イェール大学のエイミー・アーンステン博士によると、「戦うか逃げるか」の防御システムは学習にはつながらない。恐怖や苦痛で扁桃体が活性化すると、知的な活動を司る前頭前野の活動が阻害される。すなわち、子供のしつけで恐怖を使うことは否定される #心理学 #MBA pic.twitter.com/icdUl5ojcZ
— 木田知廣 (マサチューセッツ大学MBA講師) (@kidatomohiro) January 16, 2023
も、最近の若手の「叱られたくない」というのと平仄が合います。
一方で、難しいのはここから。「誤学習」(○○をやらない)に対しては、
【MBAの心理学】誤学習(○○をできるけど、しない)への対応は行動アプローチ。何をどうするかを明確に伝え、それができたら報酬を与える。もっとも、その行動の焦点化は難しい。言い訳ばかりする部下に、「言い訳するな」と言っても効果がない #心理学 #MBA pic.twitter.com/nt7a8mdMIN
— 木田知廣 (マサチューセッツ大学MBA講師) (@kidatomohiro) January 27, 2023
と提唱されているわけですが、ビジネスの現場では、これがなかなか難しい。いや、ホントに、どうやったら言い訳しなくなるのか、方法があったら教えて欲しい。
メルマガ MBAの三冠王 Vol.267 若手を辞めさせない「オンボーディング」
「転職予備軍」が増えているってご存じでしょうか?
ある調査によると、20代の30%は「2年以内に会社を辞めたい」と思っているそうです。
そういう時代だし、やむを得ないのでしょう…
なんて悠長なこと言ってられないのが会社サイド。
現場はただでさえ人手不足。
しかも、転職の動機だって曖昧ですからね。
その気がないのに転職サイトに登録して、スカウトメールが来て転職なんて、そんな受け身の姿勢でいいわけがありません。
では、会社はどうすべきか。
その答えが、「オンボーディング」です。
若手に定着を促す方法論は…
手段が目的化する部下の指導法~上司の仕事は対話による部下育成
「マジメだけど、成果が上がらない部下」がときどきいます。そのような方が陥りがちなのが、「手段の目的化」。つまり、上司から指示されたことを、「何のためにやっているか」を考えずがむしゃらにやるというパターン。このような方への指導は、2段階に分けること。第1段階は、もちろん仕事の目的を考えてもらうことです。そして、より重要な第2段階は、その方に「考えさせる」こと。このために上司必須の対話による指導法を紹介します。
手段が目的化する部下は成果が上がらない
マジメなんだけど、成果が上がらない部下っていませんか?実はそういう人には共通点があって、それが、「手段の目的化」。つまり、「何のため?」を忘れて、目の前のことに追われてしまっているんです。
たとえば、営業のお仕事。部下に指示するわけです。テレアポして。ド新規のお客様に電話をして、商談を設定して。1日50件目標ねって。
真面目な部下は、一生懸命電話をかけてくれます。「○○という会社の□□です。御社でマーケティングを担当している方につないでいただけますか?」。断られても、何回も何回もかけてくれる。
いやいや、これでは成果でないですよね。そんなときは、そもそもの目的を考えさせてあげましょう。いやね、目の前の電話をかけることに一生懸命みたいだけど、目的考えて。あくまでも、商談を設定するためだよね?
しかも、商談設定って最終的なゴールじゃないじゃない?最終的なゴールは、受注をいただくこと。つまり、ニーズがありそうなお客様との商談を設定しないと意味ないわけ。
だとしたら、テレアポも工夫できる?話す内容、話す口調、電話をかけるタイミング、電話をかける相手、いろいろ工夫の余地はあるんじゃない?
上司にとっては当たり前の、電話をかける→商談を設定する→受注をいただくという目的と手段の流れが、この部下の頭の中では整理できてなかったわけです。結果として、手段が目的化して成果があがらないという例でした。
「考えない方が楽」
ただ、これ、もうちょっと掘り下げていきましょう。なんでそういう風に手段が目的化しちゃうの?実は、部下は頭の中でこういう風に考えているかもしれません。「ウチの会社では、考え無い方が楽なんだ。言われたことをそのままやるのが、部下には求められているんだ」
本来であれば、目的を押さえて、そのための手段をあれこれ考える。その中から、これをやってみようというのを決めて、上司に進言する。「いやね、テレアポよりも、最近流行のLINEを使ったプロモーションやりませんか?」。スマホアプリのね。LINEの公式アカウント使って、クーポンを配って…みたいに。
ところが、過去の上司は、それを一切否定。「そういうのはいいんだよ。まずは言われたことをしっかりやりなさい」。
結果として、この人はどんどん考え無くなってします。先ほどの、手段が目的化しちゃう人材のできあがりです。
じゃあ、どうしたらよいか?そういう手段が目的化しがちな部下に対して。答は当然、さっきの逆です。部下から意見を聞いて、それを採り入れてあげることです。「よし、じゃあ、それでうまくいくか、検証してみてくれ」って部下に指示するわけです。
なんて言ってると、上司の方からクレームが来そうですよね。「いやね、言ってることは分かるけど、ウチの部下はそういうレベルじゃないんだよ。アイデア出せって言うと、わけの分からないアイデアを出してくるんだよ」って。
いったん部下の考えを受け止める
たとえばさっきのLINEを使ったプロモーションだって、使える業界、使えない業界ってありますからね。法人向けビジネスだったら、LINEなんて意味がないでしょう。
もちろん、そういう上司の意見も分かります。でもね、例えそうであっても、いきなり否定せずに聞いてあげましょう。「あぁ、LINEね。確かに最近流行だもんな」。
そう、いったん受け止める。その上で、違うと言うことを伝えます。
「でもさ、ウチの業界って、法人向けビジネスじゃない?そういう場合でもLINEって使えるかな?」
部下は気づきますよね。あ、たしかに、ウチではLINEはムリだな。
そしたら上司は、さらに考えを促します。「うん。でも、そういう風に考えるのはとてもいいと思う。ぜひ、他のアイデアも考えてみて。ただ、そうは言っても目の前の商談設定があるから、テレアポにも力を入れてね」
まとめると、いきなり否定するのではなく、一度受け止める、その上で、違うと言うことを伝える、そして、さらなる考えを促す。
もちろん、一度きりではないです。何回も続けていきます。そうすると、部下もだんだん気づいていくわけです。「あ、ここでは自分が意見を言ってもいいんだな。自分も考えることが求められているんだな」って。
そうですね。勘のいい人は気づいていると思いますが、「心理的安全性」が生まれるわけです。そうすると、何が起こるか。もちろんこの目の前の部下も成果が上がるんだけど、他のメンバーの行動も変わってきます。それこそ、「自分も考えることが求められているんだ」って気づくことは、今の時代重要ですからね。テレアポだけじゃなく、いろいろと試行錯誤する必要があるので。
ということで、上司の方であれば、今回紹介した一連のやりとりをマスターしてください。
メルマガ 祝!youtube登録100人突破
私のYoutubeの登録者、おかげさまで100人突破です。
https://www.youtube.com/@kidatomohiro
始めたのが2022年6月ですから、ここまで1年半。
ようやく苦労が実りました…
が、マーケティングという観点からいうと、ぜんぜんペイしません。
投入した労力に対して、反応率が低すぎ。
これからどうするか…!?
考えてみたので、これからyoutubeを使ってプロモーションをしたい方はご覧下さい。
予言されていたサブプライム問題~未来を見抜く情報ソース
経営者ならば未来を予測して、それに合わせて自社の戦略を構築すべき…というのは正論ですが、実際のところは難しいものです。一方で、米国のサブプライムローンの問題などは、実は事前に「危ないのではないか」という予測がされており、未来予測はまったく無理ということはありません。ここでは、未来を予測するのに役立つ情報源(ソース)を紹介した上で、独自の「2028年予測」を公開します。
予言されていたサブプライム問題
未来の予測が今回のテーマですが、実は私、あるショッキングな経験があって、それがサブプライム問題。その後のリーマンショックの引き金になったので、おぼえている人も多いのではないでしょうか。2007年の出来事ですが、実はこれ、予言されていたんです。私の手元のメモにこう書いてあります。「米国の金利オンリー住宅ローンの急増から5年たち、元本部分の返済が始まる」。どこかのニュースから転記したものでしょうね。
ところが。ところが、これを自分でも忘れていました。結果、サブプライム問題が始まったとき、ポカーン。うわー、なんだかたいへんだけど、どうなっちゃうんだろう?って手をこまねいていました。実は当時私は創業からちょうど1年。「さあ、これから会社を大きくしよう」というときに、サブプライム、つづくリーマンショックと苦しい日々を送ったんです。でも、このニュースを思い出したら、対応がずいぶん違ったと思うんです。「あ、来たな」と思って、これはヤバいことになるから、ショックに備えよう、という発想がはたらいたはずです。それ以来私は、未来の予測には気をつけるようになりました。
未来予測の情報源
もちろん、あたるかどうかは別です。だって、去年、ロシアによるウクライナ侵攻なんてぜんぜん創造もしていませんでした。だから、絶対当てようではなくて、仮説、仮置きでいいから、「こうなるんではないか」というシナリオを作るのが目的になります。
その際の情報源はいろいろあるんですけど、まずは人口ですね。実は未来を予想するのに、人口のデータは最もハズレがないんです。たとえばいまの50歳の人口、100万人をちょっと切るぐらい、90何万人かだと思うんですけど、5年経つと55歳人口がやっぱり同じぐらいになるはずです。もちろん、なくなる方が出る分少し減ります。ただ、大規模な移民とかない限り、そう大きな変化はありません。なので、これが基本。
加えて、よく見るのが野村総研さんが出している「未来年表」。これは、よくできてます。法律とか政府の目標、推計値なんかがコンパクトに見えてとても便利。たとえば、2026年にはアメリカのアルテミス計画で人類が月面着陸する目標なんですってね。そこに向けて、これから宇宙ビジネスが伸びていく、なんて想像が成り立ちます。
別のソースとしては、本も読みます。人口減少カレンダーで有名な河合先生の「未来の年表」とか、あるいはたまたま手元にありますけれど、坂口先生の「未来の稼ぎ方」という本も、面白いです。ぱらぱらっと見るだけでも、しっかりとデータが押さえてあって、労作です。
あと、短期、つまりこの1年はどうなるか、なんてのに関しては、船井総研さんの時流予測レポートも面白いですね。今年の年頭のレポートにはこんなことが書いてありました。「デジタルを活用して属人性をなくすことで、経営の安定化や労働費用を圧縮して高収益を実現する企業が台頭」。はっはぁー、と思いましたよ。労働力不足は間違いないので、そこにどう取り組むかは大きな課題だな、というのが伝わってきます。
あと、逆も考えますね。逆というのは、歴史。過去、どんな流れになっているか分かると、予測も正確になります。ライブ配信の別の回でお届けしましたけど、「超予測」という手法です。だから、過去30年ぐらい、何があったかを押さえるんです。このために面白いのが、過去の10大ニュースをチェックするというもの。けっこう忘れていますからね、大事なことを。あるいは、あれ?これ、この年だったんだ?なんて発見もあります。1993年の北海道南西沖地震なんて、229人も犠牲者の方がいるのに、忘れてしまっていました。
2028年予測
では、そのようなソースを踏まえて、ズバリと私の5年後予測。つまり、2028年の姿を公開します。あんまりデータに基づいてない、かなり直感的ですけれど、ひとつのシナリオとしてお聞き下さい。
まず政治面です。「習近平後」中国の頭打ち、米国弱体化により世界的な混乱 (多極化)。習近平さんの任期が確か2027年で終わるのかな。その後どうなるか。今現在も中国はちょっときな臭いですけどね。国内で人気取り政治家 (ポピュリズム)の台頭とばらまき財政。指導力が低下した政治に代わる勢力の台頭 (思想?宗教?軍事?)
では、経済面。インフレ (世界中でお金があふれている)。日本の財政難の解消を狙って高金利に誘導する。では、社会面。気候変動の影響が大きくなる (イナゴとか、日本では話題にならなかったが世界的には問題)。貧富の格差拡大による社会の不安定化。ジョブ型雇用は進まないだろうなぁ…。でも、転職や副業が当たり前の時代かもしれません。
そして、技術面。いろいろあります。IoT、5G、ロボティクス、AI、VRの商用化。これも、ライブ配信の別の回で取り上げましたけど、要チェックのテクノロジー分野は多いです。そして、大事なのは、これらを活かす企業と活かさない企業で明確な差が出ること。「イノベーション」というのはお題目ではなくて、企業の成否を担うことになると思います。一方で、先ほどの副業とともに、経済の「ウーバー化」はますます進む (ギグワーカー経済)。こう、なんていうか、「企業」という枠組みが崩れていく予感がしますね。それに代わって、ブロックチェーンのDAO(分散型自律組織)とかが本格化すると面白いんですけど、ちょっと違うかな。
はい、ということで、私の勝手な予測をお伝えしました。これ、実際にあたってるかどうか、振り返ってみると面白いですね。その頃まで、ライブ配信続けているのかな。
意外と深い利他的処罰~先週のMBAの心理学
マスク警察を説明する利他的処罰
コロナ禍で「マスク警察」なんて言葉が生まれました。いわく、世の中のマスクをしていない人を糾弾する、という行動です。何だかすごい同調圧力だな、と思いつつ、「利他的処罰」という言葉で説明されると、ピンときます。
【MBAの心理学】背側背側縫線核が活性化する人はたとえ自分が損をしてもルールを犯した人を処罰する「利他的処罰」をする可能性が高い。これは、太古の時代から群れを維持する心のはたらきが残ったと想定される #心理学 #MBA pic.twitter.com/3LvlaYnoJm
— 木田知廣 (マサチューセッツ大学MBA講師) (@kidatomohiro) January 10, 2023
マスク警察も、「マスクをしていない人は世の中に害をなす人なので、罰しなければ」とおもうのでしょう。ちなみに、こういう発想をする人は悪人かというとそんなことはなくて、むしろ誠実な人ほどなりがちだとか。脳科学者の中野先生による「努力不要論」では、
【MBAの心理学】誠実性が高い性格の人ほど「頑張ってるのに報われない」と感じる。そのような人は、報酬の配分を決める最後通牒ゲームで自分が1受け取れても、相手が9もらえることを知るとこの取引を「おじゃん」にする。脳内の背側縫線核のセロトニントランスポーター密度が低いと言われる pic.twitter.com/R6fnFlTgUk
— 木田知廣 (マサチューセッツ大学MBA講師) (@kidatomohiro) February 28, 2022
と説明されます。何だか皮肉ですけどね。
悪意ある処罰もするのが人間
一方で、利他的処罰だけでないところがさらに問題を難しくしています。
【MBAの心理学】利他的処罰とセットになるのが相手にネガティブな経験を与えることそのものが目的となる「悪意ある処罰」(Spiteful Punishment)。山岸俊夫玉川大学教授によると、悪意ある処罰も人間の脳内の報酬系を活性化させる #心理学 #MBA pic.twitter.com/fzfV4oOuTA
— 木田知廣 (マサチューセッツ大学MBA講師) (@kidatomohiro) January 11, 2023
いわゆる「意地悪」な感じでしょうか。
ときどき、しつけのために厳しく叱るという人がいますが、これは効果がない、どころか逆に作用してしまうことが検証されているそうです。
【MBAの心理学】利他的処罰とセットになるのが相手にネガティブな経験を与えることそのものが目的となる「悪意ある処罰」(Spiteful Punishment)。山岸俊夫玉川大学教授によると、悪意ある処罰も人間の脳内の報酬系を活性化させる #心理学 #MBA pic.twitter.com/fzfV4oOuTA
— 木田知廣 (マサチューセッツ大学MBA講師) (@kidatomohiro) January 11, 2023
でも、そうするとなぜ人類は昔から叱るという行動を辞めないのか、という疑問は残りますけどね。
7つの習慣で振り返る2022年は5勝2敗。優秀で気が合う人と協働する2023年
自身の成長を加速したいビジネスパーソンにお勧めが、自身を振り返ること。その際の判断軸として、コヴィー先生の7つの習慣を使うと、自分が「何ができていて、何ができていないか」が明らかになります。英語の原著も交えながら、7つの習慣で振り返る方法論を紹介します。
年末には7つの習慣を読み返す
私の毎年の習慣ですが、年末に「7つの習慣」を読みます。そして、自分ができていること、できていないことを確認するんです。結論としては、2022年も、なかなかうまく進まなかったですね。とくに、5番目。「まず理解に徹し、そして理解される」というもの。
このライブ配信でも、部下の指導法をいろいろとお伝えしているじゃないですか。ところが、上司からの指導がなかなか部下に理解されなくて、イライラすることもあるわけです。そんなときにふと、上司もまずは部下を理解して、その上で初めて部下から理解されるんじゃないか、なんて思います。
まぁ、逆に部下の立場から見てもそうですけどね。自分が上司から評価されていないと思う人は、まずは上司のことを理解してみることをお勧めしたいですね。以前のライブ配信でボス・マネジメントについてお伝えしましたけど、その10個のチェックリストにもありました。上司の痛みと喜びを理解しているかって。部下も、まずは上司を理解して、それから上司から理解されるって言う考え方になってもらえるといいんだけど…。まあ、それは期待してもしょうがないですからね。まずは自分ができるようになろう、と思います。
そうね。だから、今年、2023年のテーマとしてもいいと思います。
5勝2敗の7つの習慣
さて、では、7つの習慣の全体像を見てみましょう。ちなみに、今回こちらも紹介します。そう、7つの習慣の原書です。これは、私がアメリカに旅行に行ったときに、たまたま買ったもの。1990年代じゃないかな。その頃別に7つの習慣は知らなかったんですけど、本屋に山積みになっていたんでしょうね。そんなに売れているなら買っていこう、みたいなノリで。
ただ、その後読まなかったんですけどね。もったいない。日本語で読んだのが、おそらく2005年ぐらい。もっと早く読んでおけば、私の人生も変わったかな。変わらなかったかな。
さて、では7つの習慣その1。主体的である。英語で言うと、英語ではBe proactiveといいます。これは、昨年は○。まぁ、いつもできてますけどね。あんまり、人のせいとか環境の生にはしないですね。自責的って言うか。
では2番目。終わりを思い描くことから始める。英語で言うと、Begin with the end in mindといいます。これも、○。何事も目的を決めてやってますからね。目的的って言うかね。
では3番目。最優先事項を優先する。英語で言うと、Put first things first。これも、○かな。優先順位はいつも考えてますからね。ちなみに私のタスク管理のひとつのやり方ですけど、こうやってポストイットにやるべき事を書き出すんです。もう、書くのは思いつくままに。それで、こうやってはり付けた後、どれから手を付けるべきか、それこそ最優先事項を優先するために考えるわけです。
では4番目。Win-Winを考える。英語で言うと、そのままですね。Think win/win。これは、ん~、あえて言えば、できていないかもしれないですね。×。ついつい、自分のメリット優先になっちゃいますからね。もちろん、相手から何かを奪い取ってやろう、という風には考えませんけど、まずは自分。ちょっと改善の余地ありですね。
そして5番目が先ほどの、「まず理解に徹し、そして理解される」。英語で言うと、Seek first to understand, then to be understood。これは明確にできてないので×です。
では、6番目。 シナジーを創り出す。英語では、Synergize。対人関係で、妥協するのではなく、お互いにとってメリットがある第3の案を見つけましょう、となります。ん~、これは、できたような、できていないような。あえてどっちか付けるとしたら、○でいいかな。
ちなみに7つの習慣の著者、コヴィー先生は面白いことを言っていて、このシナジーを生むためには、コミュニケーションが重要である、と。コミュニケーションのレベルに3段階あるとのことですが、防衛的なコミュニケーションは当然ダメ。ところが、面白いのは、相手のことを一方的に尊敬するだけのコミュニケーションもダメなんだそうです。むしろ、対等の関係。うん、だからこれは、できている気がするな。
では、最後の7番目、刃を研ぐ。英語では、Sharpen the Saw。ソーというのは、のこぎりのこと。のこぎりの歯をヤスリで立てましょう、となりますね。これもねぇ、○付けてもいいんじゃないかな。昨年は、自分の健康に多大な時間とお金を使いましたからね。おぼえてますでしょうか?このライブ配信でも紹介したけど、ファンケルさんのパーソナルワンというので、身体の中の栄養素、何が足りていて何が足りていないかをチェックしました。まぁ、その前に、そもそもとして化学物質過敏症というのが発覚したのも昨年ですしね。それをちゃんと、薬でコントロールしようとしているからね。うん、○。
ということでまとめてみると、7つの習慣は5勝2敗。できなかったのは、「理解してから理解される」、と「win-winを考える」。ここら辺が今年の課題になりそうですね。というか、結局のところ、自分でやるべき事はやっているわけですよね。こうみても。
気の合う人と働く
一方で、他者へのはたらきかけ、他者との協働関係に課題がある、と。うん。これね、今年考えているのは、やっぱり優秀で気が合う人と仕事がしたい、ということ。実はこれまで私、仕事を一緒にする人を選ぶとき、「その人と気が合うか」はあまり重視してきませんでした。もちろん気が合えばいいんだけど、それ以上に役割、つまり組織の中でどんな機能が得意か、それが自分と補完的になっているか、を重視していたんです。
これ、今年は変えてみます。気が合うかどうかを軸に、社外にも人的ネットワークを広げて、一緒に働いていてストレスが少ない人と協働してみたいと思います。
メルマガ MBAの三冠王 Vol.264 パソコンで簡単にマンガが描ける
私、こう見えてマンガ大好き。
好きなあまり、「自分でもマンガを描きたいな~」と思うくらいです。
でも、無理ですよね。絵は下手だし、あれだけの分量を仕上げるなんて…
と思ったら、実はパソコンで簡単にマンガを描けるソフトがあるんです。
それが、こみPo! (こみぽ)。
論より証拠、まずはこちらをご覧下さい。
(さらに…)
会社のトップは性格が悪くなる? 先週のMBAの心理学
傲慢という病、ヒュブリス症候群
「ヒュブリス症候群」というのは、なかなか面白い(恐ろしい)ですね。
【MBAの心理学】デビッド・オーウェンによると、CEOになると脳にダメージを受ける。ヒュブリス症候群と呼ばれる、自己肥大がそれ。権力者とそれほど権力を持たない人の脳波を調べると、共感力を発揮するとき不可欠な「ミラーリング」という神経プロセスが、権力を行使すると損なわれるとのこと pic.twitter.com/h6x5icUT0e
— 木田知廣 (マサチューセッツ大学MBA講師) (@kidatomohiro) January 3, 2023
ちなみに、「ヒュブリス」はもともとギリシャ語由来であり、もともとは神に対する傲慢なふるまいをさしていたそうです。それが、オーウェン先生の定義によれば、他者への傲慢さになったということ。
日本語ではよく片田珠美先生の『オレ様化する人たち あなたの隣の傲慢症候群』という書籍とともに解説されることが多いようですが、もともとのオーウェン先生の説とは微妙に違う気がする。オーウェン先生の説のポイントは、脳内の神経プロセスにダメージを受けるとのことなので、単なる「人格が変わる」以上に脳の配線が変わる不可逆な変化を意味するような気がします(要検証)。
考えてみると、アメリカの巨大企業のトップは私生活において離婚する確率が高いような気がします。ビルもジェフもジャックも。ひょっとしたらこのヒュブリス症候群と関係しているのかもしれないですね。
信頼を得る6つの要素
ヒュブリス症候群の逆が、信頼を得る方法。これはこれで説得力がある。
【MBAの心理学】メイヤーらは、他者から信頼を得るには6つの要素が必要と提唱。1.有能であること、2.誠実であること、3.慈悲深いこと、4.開放的であること、5.公正であること、6.一貫性があること。リーダーは意識的に6つの要素を自己涵養する #心理学 #MBA pic.twitter.com/XVyLvtWXBW
— 木田知廣 (マサチューセッツ大学MBA講師) (@kidatomohiro) January 5, 2023
一方で、ここでいう「信頼」って何?という話はある。原語では”Trust”だけど、”Credit” (信用)との使い分けがどうなっているかは知りたいところ。何でかっていうと、フラゲイル先生の「特異性信用」もすごく説得力があるから。
【MBAの心理学】ノースカロライナ大学のアリソン・フラゲイルによると、組織の中での「信用」には二つある。「オレたち仲間だ」というメンバー性信用と「あいつはモノが違う」という特異性信用。(非公式の)地位がなく特異性信用を勝ち得ていない人が意見やアイデアを出すと嫌われやすい。 pic.twitter.com/SsKvfa33uj
— 木田知廣 (マサチューセッツ大学MBA講師) (@kidatomohiro) September 15, 2021
メルマガ MBAの三冠王 Vol.263 アメリカで広まる従業員のサボり症候群
アメリカで広まっているQuiet Quitting (クワイエット・クイッティング:静かなる退職)という言葉をご存じでしょうか?
簡単にいうと、
半ば辞めたような気分で、仕事に力を使うのをやめよう
という従業員の間に広まる空気感のことを指しますが、日本にも広まりそうなイヤな予感がします。
私は仕事柄、アメリカの人事情報をチェックしていますが、そこで見えてきたのは…
中途採用者向けオンボーディングの3つのコツ
オンボーディングという言葉、人事の世界では一般的になりつつあります。もともとは「船に乗せる」という英単語だったのですが、今では意味を変えて、新しく入社した人が1日も早く活躍できるようなサポートのことを指すようになりました。日本企業では伝統的に新卒採用者へのオンボーディングが充実しています。そして最近注目されるのが、転職者、つまり中途採用者向けのオンボーディングです。その際、新卒採用者とは異なる取り組みが求められ、それを3つのコツにまとめました。第1がKnow Who(ノウフー)、ノウハウではなくて、どんな人がいるのかを教えてあげる、第2が「常識」を伝える、そして第3がメンターを付けるということです。それぞれについて詳しく解説します。
オンボーディングとは新たに組織に参画した人が1日も早く活躍できるようなサポート
今回のテーマは、オンボーディング。もともとは「船に乗せる」という英単語だったのですが、今では意味を変えて、新しく入社した人が1日も早く活躍できるようなサポートのことを指すようになりました。新卒採用だと分かりやすいですね。10月1日の内定式から始まって、内定者研修、入社式、新人研修などなど。あれ、結局のところ、オンボーディングです。別に単なる記念として入社式をやっているワケではなく、ちゃんと内定した人に入社してもらい、組織へのエンゲージメントを高めて、その後組織に定着してもらうためにやっているワケです。
その背後にある問題意識は、退職者の増加。よく、入社3年にないに辞める若手が増えている、なんて言われていますが、これ、企業にとっては大問題です。採用活動って相当コストがかかっていますからね。苦労して入社まで漕ぎつけたのに、3年経たずに辞めてしまうというのは、投資に対するリターンが見合わないのです。だから、採用活動だけでなく、オンボーディングにも力を入れましょう、というのが最近の流れです。
そしてこれは、中途入社の人にも当てはまります。従来中途採用というのは即戦力扱いでした。入社したら、「前職で成果が上がったから入社できたんだよね?じゃあ、さっそくうちでも成果を上げて」というスタンスで活躍が期待されます。でもこれ、キツいです。新しい人間関係、新しいお客様、ヘタをすれば新しい業界ですからね。いきなり成果が上がるわけもない。あまりにも過剰な期待だと、プレッシャーで成果が出せないし、せっかく入社してくれたのに、あっという間に転職で去ってしまうなんてなったら、やっぱり投資対効果が悪いわけです。
だからこそ、中途採用の人に対してもオンボーディングの重要性は増しています。その際、コツがあって、ざっくり3点にまとめました。1. Know Who、ノウハウではなくて、どんな人がいるのかを知るという観点で、ノウフーです。2点目は「常識」を伝えると言うこと。そして3点目はメンターを付けましょう、となります。
中途採用者向けオンボーディングでは「ノウフー Know Who」を伝える
まず最初のKnow Who。これはわかりやすいですね。新しい組織に入ってくると、そもそもどんな人がいるか分かりません。「この知識はあの人に聞けばいい」というのもありますし、逆に「この手の案件はあの人に根回しておかないと後でめんどくさいことになる」という地雷も分かりません。そういうのを、中途入社の人にも教えてあげるのが、オンボーディングの中では極めて重要です。
では、二つ目。「常識」を伝えましょう。ここで言っている常識というのは、その会社ごとの常識です。これね、転職したことがある人は分かるんですけど、ひとつの組織で「当たり前」とされたことが、別の組織では当たり前どころか、「やっちゃダメ」ということってあるんです。たとえば、ベタな話しとしては、LINEの仕事での利用。これ、会社によってスタンスが180度異なる場合があります。ある会社では、NG。「そういうのは業務の連絡には向かないよな」、「機密情報が外部に流失したら困る」などなど、理由は分かります。
ところが、別の会社ではOK、どころか、むしろ積極的に使って欲しいとされます。既読がついて、読まれたかどうかが分かるし、何せ手軽で便利。部署内でLINEグループを設けているところもあります。
これね、LINE利用ぐらいなら分かりやすいんですよ。あ、そうなんだ。でも、実際のところは、言葉になっていない、ましてや文書でルール化されていないけど、「ウチのやり方はこうなんだ」っていうの、中途採用の人はとても戸惑います。
実は私も、これを体験したことがあります。それこそMBAの中で。私の母校はロンドン・ビジネススクールじゃないですか?ところが、3ヶ月間だけ交換留学で、アメリカのダートマス大学に行ったんです。そこで気づいたのは、先生の呼び方が違うんですよね。ロンドン・ビジネススクールでは、先生もファーストネームで呼びます。私の師匠のスマントラ・ゴシャール先生も、世界的な権威ですが、私は平気でスマントラ、スマントラ、と呼ぶわけです。ところが、ダートマス大学では「先生」呼び。ブランディングの大家でケビン・ケラー先生って言う方がいるんですけど、クラスメートと話すとき、私が「ケビンは…」なんて言うと、モトからダートマスにいる学生は怪訝な顔をするわけです。「おいおい、コイツ、分かってねぇな…」って。
え?じゃあ、なんて呼ぶの?ダートマス大学では、「プロフェッサーケラー」です。要するにケラー先生、って言う感じね。私なんかホエ~って思いましたよ。そうなんだ~って。で、思うわけじゃないですか。「いやいやいやいや、だったら最初からそうなんだって言ってくれよ。そしたらこっちも恥をかかなかったのに」って。でも、常識ですからね。あまりにも当たり前のことは、人間は口に出しません。ルールになっているわけないじゃないですか。「ここでは、プロフェッサー○○呼びですよ」なんて。中途入社の人も、まったく同じです。「常識」が前職とは違っているので、それを伝えてあげましょう、となります。このためのお勧めが、過去の中途入社者のインタビューをすること。「○○さんが入社したとき、常識が違って驚いたことは何ですか?」って。逆に、常識って、モトからその組織にいる人、よくプロパー社員って言われますけど、その人には当たり前すぎて気づかないですからね。むしろ、社外から来た人に聞いて、それをデータベースとして蓄積するのがお勧めです。
オンボーディング・メンターを付ける
では、3つ目。中途入社した人のオンボーディングのために、メンターを付けましょう。メンターって言うのは、直接の上司じゃなくて、アドバイザーって言う位置づけです。これはオンボーディングに限らずメンター制度をやっている会社ってありますよね。組織の中の若手と、役職がうえなんだけどラインはずれている人をセットにして、メンター、メンティーの関係にするって言うの。
これを、中途採用の人には付けてあげましょう。それこそノウフーも「常識」も、「まずはこの人に聞いてみよう」という人を決めてあげるって言うことです。こういう人がいると、安心ですよね。「何かあったら聞いてみよう、何もなくても聞いてみよう」みたいな感覚です。
誰がメンターになるかって言うのにもコツがあって、別に役職は上でなくてもいいですけれど、同じ部署の人じゃない方がいいですね。なんでかって言うと、最初の方にもいったんですけど、中途採用者って即戦力として期待されるじゃないですか。とくに同じ部署の人は、「お手並み拝見」みたいな感覚もあるんです。プロパー社員の人は、思ってるわけですね。「なに?転職?ほっほー、さぞや前職で成果をあげてきたんでしょうなぁ。では、拝見しましょうか、その実力とやらを」
もちろん、そこまであからさまでなかったとしても、そういう空気ってあるじゃないですか。だとすると、同じ部署の人には聞きにくいことってあるんです。「こんなの聞いたら、馬鹿だって思われるんじゃないか?」って。なので、メンターを付けるにしても、同じ部署の人出はない方がお勧めなんです。
最後通牒ゲームが示す人類の希望~先週のMBAの心理学
最後通牒ゲームとは
ここのところの「MBAの心理学」では最後通牒ゲームを取り上げています。
【MBAの心理学】ギュート考案の最後通牒ゲーム。Aさんに1000円渡し、そのうちいくらかをBさんと分け合ってもらう。Bさんは金額によっては「ノー」を言う権利あり。その場合AさんもBさんもお金を受け取れない。純粋に経済的に考えるならば、999円対1円でもBさんは得することになるが pic.twitter.com/GOUAPgguol
— 木田知廣 (マサチューセッツ大学MBA講師) (@kidatomohiro) December 5, 2022
という実験の結果がこちら。
【MBAの心理学】ヘンリックによる世界規模の最後通牒ゲーム。世界平均で見ると1,000円のうち3-400円をBさんと分け合う。日本では420円。もっとも気前が良いのはインドネシアの部族で570円をBさんにあげた。鯨をモリで捕って獲物を公平に分け合う文化が関連しているとの仮説 pic.twitter.com/Te7L0IzF4B
— 木田知廣 (マサチューセッツ大学MBA講師) (@kidatomohiro) December 12, 2022
というのにたまらなく興味をそそられますね。人間の「本性」ってそうなんだ、と。
動物にもある最後通牒ゲーム的な心のはたらき
ところが。面白いのは人間だけではなく、サルにもこのような不公平を憎む心があるとのこと。
【MBAの心理学】ドゥ・ヴァールによるサルの不公平忌避。2頭に同じ作業をさせた後、ご褒美として1頭にはサルの好物のブドウを、もう1頭にはキュウリを与えた。キュウリを与えられたサルは激しく怒る https://t.co/a463UmdgQ7 #心理学 #MBA
— 木田知廣 (マサチューセッツ大学MBA講師) (@kidatomohiro) December 7, 2022
ちなみに、犬やオオカミにもこの不公平忌避はあるそうで、群れで暮らす進化の過程で心のメカニズムが整ったと言うことなのでしょう。
最後通牒的ゲームの別バージョン、独裁者ゲーム
さらに面白いのは、別バージョンとしての「独裁者ゲーム」。
【MBAの心理学】最後通牒ゲームの別バージョン、独裁者ゲーム。Bさんには提示された金額にかかわらずノーと言う権利はない。この場合、Bさんと分け合うのは200円から300円に。独裁者的な力があっても20%を相手と分け合うわけで、脳神経学者の藤井直敬は、「20%の希望」と呼んだ pic.twitter.com/XBnIh4hVxA
— 木田知廣 (マサチューセッツ大学MBA講師) (@kidatomohiro) December 13, 2022
この20%という数字が示唆的で、80:20の法則を思い出させます。例の、80%の成果は20%のかつ動画から生まれているというやつ。なんだか人生全体につながる指標の気がします。
メルマガ MBAの三冠王 Vol.262 仕事の実力を上げるたった一つのやり方
「自分に力あったら、もっと○○できたのに…」
仕事で悔しい思いをしたことってないですか?
解決するにはたった一つ、自分の実力をアップするしかありません。
そんな風に思ったときにオススメの方法があって、それが読書。
え?いまさら?と思った方こそ、お読みください。
今年オススメしたい本のリスト付きです。
(さらに…)
アメリカをむしばむ隠れた病、Quiet Quitting (静かなる退職)~対処法としてのウェルビーイング
今アメリカで問題になっている、Quiet Quitting、「静からなる退職」と呼ばれる現象をご存じでしょうか?実際に退職することではなく、燃え尽き症候群にかかった従業員がサボることを指します。俗に、潜在的には従業員の50%がこれにあたるとも言われます。この対処法がウェルビーイング、つまり従業員の心身の健康を高めようという取り組みです。
Quiet Quittingとは静かなる退職
今アメリカで問題になっている、Quiet Quittingという言葉、ご存じでしょうか?日本語では「静からなる退職」と呼ばれます。クワイエットが静か、そしてQuitというのは辞めるという意味の英単語です。なので、Quiet Quittingで静かなる退職。ただ、実際に退職してしまうと言うことではありません。ものすごく単純に言うと、サボる。これが、アメリカでは大きな問題になっているんです。要するに、サボる人が多くなってきているよね、と。
それも、あからさまに、「はぁ~、かったりー。やってらんねーよ」というのじゃないんです。そこはクワイエットですからね。あくまでもさりげなく、です。言われた以上のことはやらない、昇進・昇給にも興味がない、同僚が頑張っていても定時になったら帰っちゃう、そんなイメージです。
え?そんな人、日本にもいるじゃん?と思うかもしれませんが、アメリカですからね。日本よりも解雇規制がユルいです。つまり、「お前、クビ」というのが言いやすい状況です。そうすると思うじゃないですか。クビにならないためには一生懸命働かなくちゃいけない…はずなのに、Quiet Quittingが進んでいるのは問題だ、となります。一説には、潜在的には労働者の50%がQuiet Quittingしているなんて説もあるみたいですからね。
加えてもうひとつ、エンゲージメント。貢献意識です。実は日本よりもアメリカの方が会社への貢献意識はよっぽど高いんです。ここに今、別の動画が出てると思いますけど、ある調査によると会社にエンゲージメントを感じている人の割合は、日本では何と6%。ところがアメリカでは32%という結果も出ています。それなのに、ですよ。エンゲージメントが高いにもかかわらず、Quiet Quittingが起こっているのはどういうことなんだ?と疑問が出てくるわけです。
Quiet Quittingの背後にある燃え尽き症候群
答は、燃え尽き症候群だそうです。コロナ禍でリモートワークが始まったじゃないですか。そうすると、アメリカの人はモーレツに働くようになったそうです。1日あたりの労働時間が12時間を超える、みたいな状況で。そんな緊張状態が2年ぐらい続いて、ヘトヘトになっている。そこに来て、アメリカ経済が減速しそう。IT業界を中心に大量解雇なんて起こっています。そうすると、働いている人は思うわけです。「ここまで一生懸命働いてきたのに、なんだよ」って。
ましてや。ましてやですよ。その解雇が、たったひとりの億万長者のせいだったとするじゃないですか。そう、たとえばツイッター社。イーロン・マスクさんはツイッター社を買収後、経営陣を即刻クビにしました。その後は従業員の大量解雇という流れです。これ自体が正しいかどうかは分かりません。というか、私なんかの目から見ると、資本主義ってそういうものだよね、と思います。実際、ツイッター社は2年連続で赤字なんて情報もあって、経営陣はいったい何やってたんだよ、と。
でも、従業員目線でみると、ものすごく疲弊感を感じるんでしょうね。たったひとりの変わり者の億万長者のせいで、大量解雇なんて。そんな疲弊感、燃え尽き症候群がQuiet Quittingを引き起こしている元凶であるというのは、仮説ですけども十分説得力があります。
だから、ちょっと面白いんだけど、キャリアコーチとかもQuiet Quittingを勧める場合があるそうですね。アメリカだと、コーチを付けているビジネスパーソンも多いんでしょうね。コーチに相談するわけです。「燃え尽きそうです」って。そうするとコーチは応えるんでしょう。「選択肢のひとつとして、Quiet Quittingをするのも手ですよ」なんて。
もはや社会現象のQuiet Quitting
もう、こうなってくると、社会現象みたいに見えますけどね。アメリカ社会もいろんな意味で制度疲労を起こしていて、トランプ現象と呼ばれる背後には、ブルーカラーの人たちの「オレたちは見捨てられた」みたいな怒りがあるって言うじゃないですか。だから、ブルーカラーのトランプ現象、ホワイトカラーのQuiet Quitting、なんて、全米が問題を抱えているのかもしれません。
そんな状況ですから、Quiet Quittingをしている人に厳しい態度をとっても効果はないそうです。「あなたね、このままの業績だと、クビの対象になるよ」と言ったとしても、「はぁ、頑張ります」と口先で言うだけで、行動を変えないんでしょう。アメリカも業種によっては人手不足の分野もあるみたいですからね。「辞めさせられるものなら、辞めさせて見ろ」と思う人もいるんでしょう。
Quiet Quittingの対処としてのウェルビーイング
では、どう対処したらいいか?ここで出てくるのが「ウェルビーイング」という言葉です。また横文字ですけどね、日本語にすると健康経営と言っていいでしょう。要するに、従業員の心身の健康を守る、もしくはより積極的に高めていくのが経営の役割だ、という考え方です。
燃え尽き症候群になって、Quiet Quittingになってしまうぐらいなら、その前に手を打ちましょう、と。考えてみれば、いろんな会社でQuiet Quittingが問題になっている。だとしたら、ウェルビーイングを本気で追求することで、他社に打ち勝って業績を上げることはできるかもしれないですね。
さて、ここで日本の話。このQuiet Quitting、おそらく日本でも問題になると思います。なんでかって言うと、疲弊感、燃え尽き症候群の人が多いから。日本人って、ここ30年ぐらい、すごいストレスにさらされていると思うんです。1995年の阪神淡路大震災に始まって、オウムのサリン事件、その後東日本震災、熊本震災、あと、水害は数え切れないほど起こっています。10年に1回ぐらい、数千人規模で人が亡くなる事件があるって、ものすごいストレスです。
そうすると、日本でもQuiet Quittingが広まる、というのもあり得る話ではないでしょうか。そのためにも、企業経営者にとっては今からウェルビーイングに本気で取り組む必要がありそうですね。
メルマガ MBAの三冠王 Vol.262 ケーキを3等分できない部下
まずはお礼から。前回紹介したインスタグラムのフォロー、ありがとうございます。
これからも、仕事に役立つ情報を発信していきます。
https://www.instagram.com/tomohirokida/
最近高知に出張したので、カツオの写真も上がっていますが…
では、本題。
部下をお持ちの方にぜひオススメしたい本があって、それがこちら。
宮口幸治著、ケーキの切れない非行少年たち
え?非行少年?と思うかもしれませんが、部下育成のヒントがあります。それが…